リアルワールド/桐野夏生著

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リアルワールド

「リアルワールド」 桐野夏生著  集英社文庫
2003年に単婚本として初出  2006年2月文庫化初版 

 この作家の作品は2000年度前に初めて「柔らかな頬」の上下巻に接し、後に「OUT」を読んで、これまでにない感覚と感性とに裏打ちされた作品に出遭った気がした。

 久しぶりの桐野さんの作品だが、1951年生まれたの作家が1980年代に生まれ育った若者の会話をきちっと捉えている研究心は、この人が元々もっている感性と感覚がまだ生き続け、冴えているからだと想像した。

 ただ、若者のあいだに飛び交う会話に共通するのは、舌足らず、下品、語彙の不足で、これらは脳髄の低劣さを表しているように思え、これが特殊な一部の若者のあいだの言葉でないとすれば、日本という国にも、日本人にも必ずしも明るい未来は待っていないように思われた。正直言って、うんざりが嵩じて、反吐が喉元まであがってきた。

 地の文に登場する「韜晦癖」「蹂躙跋扈」「懊悩」「迷妄」などという難度の高い言葉と、会話体の言語との落差は、作者が意図的に、極端を極端と見越して、書いたものであり、辛うじて、本書と作者の品格を保ち、護っている。

 確かに、内容は現在の日本社会の一部を洞察、鋭くえぐり出しているし、相似する事件が頻発しているのも事実だが、親が親らしい姿勢を堅持できないことに、そもそもの原因があると、私は思っている。親自体がまともな判断力を欠いているのだ。

 タイトルは「リアルワールド」だが、内容は国際的にも通用しない、あまりに小さなスケールの「ガキたちのゴタゴタ」という印象だった。


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