冬眠の謎を解く/近藤宣昭著

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とうみんのなぞをとく

「冬眠の謎を解く」
近藤宣昭(1950年生/薬学博士)著
岩波書店より2010年4月20日 新書初版  ¥760+税

 本書では心臓移植、冷凍保存、冬眠動物、体温低下、長寿、再生などがキーワードとなっており、冬眠する生物の生態を調べ、冬眠の意味を追求、推理する。

 内容は生物学を専攻した学生向きとも思えるほど、専門用語が使われ、ときに難解だが、時間をかけ吟味しつつ読み進むほどに、本書が途轍もない価値をうちに秘めていることに気づかされる。

 心臓移植という医療を行なう場合、採取した心臓は短時間で移植しないと、使いものにならなくなる。「心臓の保管を時間的に長引かせることが可能なら、医療の世界に画期的なページを開くことが可能」ではあるが、常識的な手法である冷凍保存では心臓は死を免れない。そこで著者が目をつけたのが冬眠する動物。熊やリスは冬眠する間、寝たきりであり、体温が低下するにも拘わらず死ぬこともなく、筋肉にはほとんど萎縮も退縮もなく、骨粗鬆症にもならない。そうした事実を重く考え、実験と観察の対象にシマリスを選ぶ。

 「心臓の移植」というテーマから出発した冬眠観察は当初は思ってもいなかった結論へと著者を向かわせる。「シマリスは常識を超えた長寿を全うするが、それはシマリスが冬眠中に細胞の再生能力を高めて若返りをしている可能性がある。再生医学が生命科学の最先端分野へと躍り出た現在、冬眠による幹細胞の活性化という推量は現実味を帯びてくる」と。

 さらに、「ヒトにも冬眠能力が潜在しているのではないか。昼夜や季節に同調しない自然に逆らう生活パターンに加え、社会的なストレス、過剰なエネルギー消費、飽食の毎日などの長期にわたる累積が人間が本来もっているはずの冬眠能力を奪ってしまったのではないか」と。

 序章を読み返すと、「自然が48億年もの年月にわたる試行錯誤を重ねて育てあげてきた生命だから、途方もないネタが隠されていても不思議はない。そこには想像を超えるほどの洗練された美しさと秘められた深淵がある」とあり、「本来、死を意味する低温世界は冬眠によって生へと転換され、そこには未来の生命の姿を予知したメッセージがある」という著者の洞察が記されていた。

 一方、京都大学の山中教授を中心とした「再生医療」が盛んに言われるようになったが、これを詐欺的に利用している医師がいる可能性が否定できない。具体的な医療行為は患者の体の一部から脂部分を採取し、これを約1ヶ月培養にあて、患者に血管注射を打つ。曰く、「培養された脂は患者の尤も弱い内臓に向かい、悪いところをまともなものにする」と。

 さらに、培養される液体は二度使えるので、「適当な時期にもう一度打つことが可能だ」と。

 私は肺が肺気腫という喫煙からくる病気で悩んでいたので、疑うことなく、これに乗り、百万円以上を支払ったが、結果は決して医師の言ったようなことは起こらなかった。つまり、百万円に見合う肺臓の改善はみられなかった。


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