文明の自殺/黄文雄著(その1)

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文明の自殺

「文明の自殺」 黄文雄(1938年台湾生まれ)著
副題:逃れられない中国の宿命
集英社刊 2007年5月31日 単行本初版 ¥1700+税

 本書の書評は備忘録を兼ね、3回に分けて行なう。

(書評その1)

 中国はアヘン戦争以降、「文化大革命」をはじめ、「~運動」「~革命」「「~開放」などと銘打ったすべての動きは伝統の文明を投げうつ「文明の自殺行為」だったと、作者は言明する。

 さらに、「脇目もふらない疾走の過程で中国は伝統のみならず、人権、環境など、さまざまのものを踏みつけ、振り払い、置き去りにしてきた。人民も共和も打ち捨てられている。中国は、現在、いわば高速で回転するコマであり、少しでも速度を落とすと、たちまち回転がぶれ、転倒してしまう。しかし、そういう限界が必ずやってくる」と将来を見通す。

 「中国の資源消費量はすさまじい。省エネまで配慮する余裕がないため、資源の無駄使いや環境汚染の度合いも桁違い。破滅的な規模の汚染が垂れ流され、自然や生命を蝕んでいる。農村と都市部との賃金格差、治安の悪化なども深刻だが、一方で、上層部は立場や利権を守るため、中央を強固にすべく、富と権力の一局集中に懸命。党幹部の一部は資産を海外に移し、内部闘争に必死になる。これは亡国への一本道にほかならない」

 「中国には漢民族を含め、56の民族が存在するにも拘わらず、政府は漢民族以外の民族がもつ異質性を認めようとはせず、少数民族の文化を殺すことによって自文化を肥大させている。現実には多文化、多文明であるにも拘わらず、強引に一元化を図ろうとするから争乱は絶えず、国内で衝突の可能性が高い」

 (自らの文化に相手を同化させようとするのはアメリカも同じ)。

 「中国には、トルコ系、ツングース系、モンゴル系、満州系といった外部勢力が宋、元、明、清という1千年にわたって支配した歴史がある。しかし、支配者が交替しても、中国文明、文化は変質しなかった。そのことを自画自賛する中国人は少なくない」

 「1949年に社会主義体制がスタートしてから1960年代までに、闘争と粛清がくりかえされ、餓死や虐殺などで犠牲になった人間は7千万とも8千万とも言われる。これは他民族による殺戮ではなく、自国民間での虐殺であり、このような事実と殺戮規模は世界史に例がない」

 「鄧小平による改革開放への移行は、中国史上画期的な意味があり、西洋式文明を受容した、伝統的政策の一大転換であった。21世紀は中国人の世紀、中国人による覇業が成就するという中国政治指導者たちの速成思想は傲慢を通り越して幼稚であり、滑稽ですらあり、一言でいうならマスターベーション思想に過ぎない」

 「中国の道徳精神文化に西欧の先進技術を駆使すれば、鬼に金棒と短絡している」との言葉には、あの中国に道徳などという精神文化があるのかと唖然とした。食品は偽装するし、毒物さえ混入させるし、ブランドもパスポートも偽造するし、著作権は無視するし、あげくは日本を含め外国の著名なタレントの姓名を商標にするし、なんでもありのエゴだけの社会に道徳などという観念が存在するとは信じがたい。

 「改革開放後の20年間に、中国は年間10%前後の経済成長をとげ、外貨準備高は日本を抜いて世界一になったが、一方で、それを可能にしたことのツケ、ひずみが深刻なレベルに達している。具体的に以下に述べる。

(1)官僚汚職の蔓延、年間GNPの20~25%が不正な使途不明金。政府高官による公金横領の上での海外逃亡の頻発。

(2)三権の一局集中。一人の国家指導者が党、政、軍の三権を掌握しない限り、国家が安定しないという体制の問題。(人口13億の中国社会を統治するうえでの必然。江沢民が鄧小平の加齢による衰弱に助けられて長期にわたる上海出身者による派閥を継続したが、数年前、ようやく政権を次代、胡錦濤に禅譲した)

(3)貧富の差の拡大。党幹部と高級官僚という人口の1%が国富の半分以上を独占している現実。

(4)深刻化する失業問題。農民の大半は潜在的失業者。農村の荒廃、農業の低生産性。(農民を人間扱いしない、中国のもつ長期にわたる蔑視と奴隷化)。

(5)環境汚染問題。公害病の蔓延のため、25%の夫婦が子づくりができなくなっている。

(6)世界最悪の医療衛生事情。今後も、この国は世界疫病の拡散センターであり続ける。

(7)青少年による凶悪犯罪の急増。2001年以降、年間犯罪は400万件を超え、精神異常者も急増中。

(8)国防費の18年連続の二桁増。(軍を強化し、軍を掌握することで、政権の転覆を防ぐ意味もある)。

(9)強化される一方の言論統制、情報の非公開。

(10)資源の枯渇、治安の悪化、反政府デモや暴動の頻発。アウトローの跋扈(ばっこ)、麻薬の流行。

(11)金銭万能時代に入って、もともと希薄だったモラルはゼロになり、金の亡者に成り下がった。欲望最大、道徳最低はこの民族の本性。

 「官僚汚職は中国5千年の伝統文化で、官僚制度の最大の魅力」という言葉からは、日本官僚の最大の魅力は「天下りと、天下りによる二度の退職金」「翼下に下部機関を設置し許認可権を管轄することからの利益」「政治家とのもたれあい」が即座に脳裏に浮かぶ。

 「改革開放後に国を離れた高級官僚の家族は118万7千人で、持ち出された金額は約6千億ドル」それでも、外貨の準備高がナンバーワンであることは敬意に値するし、アメリカが国債を買ってくれるよう頭を下げるのも理解できる。

 「年間に、100万人が国外に脱走しているが、政府はむしろそれを奨励さえしている。日本にさえ、すでに70万人が入り込んでいる。欧米には年間約110万から130万人が、シベリアの酷寒の地にさえ年に50万人が流出、南アには30万人、カナダのバンクーバーには60万人、オンタリオには40万人、スウェーデンでは中華料理店が1万軒、ペルーには2万軒」

 (日本国内で中国人による犯罪が増加しているのは明白な事実)。

 「書評その2」に続く。


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