終わらざる夏/浅田次郎著

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終らざる夏

「終わらざる夏」 上下巻  浅田次郎(1951年生)著
集英社 2010年7月10日初版 ¥1700+税x2冊

 本書は太平洋戦争を扱った内容だが、舞台とする土地も、物語が始まるタイミングも意表を突いている。

 舞台はアリューシャンに連なる千島列島、ストーリーは終戦の年、1945年、沖縄が陥落し、米軍の本土上陸は時間の問題というタイミングに始まる。

 内容のすべてが史実に基づくものか否かについて断定的なことは言えないものの、上下巻とも450ページを越えるが、下巻の最後の最後にロシア政府が日本兵を強制連行し、シベリアの収容所に長期にわたり押し込め、労働を強いたことに対する抗議を表明した部分からは真実の香が匂ってくる。

 この本で面白いのは、アリューシャン列島の北端(カムチャツカ半島の南端)、クリル諸島の一島、「占守島(シュムシュ)などという聞いたこともない島が主な舞台に選ばれていることであり、そこに総兵力2万を越える精兵が送りこまれていたという筋書き。しかも、その島には400名もの娘もいたという設定。

 あえて欠点を指摘するなら、物語が悠長すぎ、佳境に入るまで多くのページを割きすぎていて、しばしば眠気に襲われ、一気に読みきれないこと。とはいえ、決して凡庸な作品ではない。


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