はじめての<超ひも理論>/川合光著

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はじめての超ひも理論

「はじめての<超ひも理論>」
川合光(1955年生)著
講談社 新書  2005年12月初版

 作者は東京大学大学院物理学系研究科博士課程終了後、米国のコーネル大学助教授、高エネルギー物理学研究所研究科教授を経て、現在京都大学大学院理学研究科教授。

 これまで、本ブログに14冊ほどの宇宙に関する著作の書評を書いたおかげで、宇宙のことはだいぶ理解ができるようになったが、本書には悪戦苦闘した。

 内容が難しい上に、説明が親切すぎて、まわりくどく、同じ説明が何度もくりかえされ、読了するまでの途次、何度頭を抱えたか知れない。本書の編集を担当した人間も内容を完全には理解できず、ために、構成や作文に手を加えられなかったのではないかと推察した。また、「超ひも理論」を説明するのに、これだけの文章が必要だったのかとの疑問もある。

 この作者はロシア人のガモスの提唱した「ビッグバン」が始まる前の段階の存在を追及し、「プランク」という極小の時期を指摘しつつ宇宙創成の謎、時間の起源の秘密に迫ろうというもので、根拠をなした過去の数々の理論が解説される。

 「プランク」では、時空はもはや滑らかな点描ではなく、湯川博士の主唱した「素領域」的な泡か細胞のようなユニットの集まりではないかと思われ、それらが集団で運動しているのが「ひも」に見えるのではないか、その一つの集団が行列模型そのものであろうと想定されている。超ひも理論が完全に解け、定式化されるまではまだ確定的なことは言えないものの、プランク期の初期は唐突に始まったのではないかという予測はある。

 本投稿では、詳しく説明していると切りがないので、簡単に説明するにとどめるが、アインシュタインの「時空上に物質が存在することによって、その時空がどのように歪むか」という相対性理論に依拠することにより、ビッグバン宇宙論が発表され、それが「ブラックホール」の存在を示唆し、さらにはホーキングとペンローズの「特異点定理」とが合体して、結論的に「宇宙はビッグバンという特異点から始まった」という説がこの学界を制覇したかに思えた。ビッグバン理論には日本の佐藤勝彦教授も「インフレーション理論」で関与している。

 ところが、宇宙の始まりに遡(さかのぼ)ると、「プランクの長さ」という極小の世界付近では、相対性理論は破綻し、時空の定義ができなくなる。これは曲率Rが無限に大きくもなるし、曲率半径が無限に小さくもなり、相対論は量子力学を取り入れていないため、極小、あるいは非常に近距離の時空については完全な理論性を失い、一方、量子力学論も「重力の発散」を説明できないという点で、宇宙を説明する上での完全性を失っている。

 双方の不完全な部分を補いつつ、これら現代物理学の二大成果を統合していく理論が「超ひも理論」であり、具体的にはビッグバンが始まる前に「元素合成」の時期があり、ここでヘリウム、リチウムなどの軽い元素が合成され、ばらばらだった陽子、中性子が核融合反応によってくっつき合い、軽い元素が合成される。この軽い元素合成までの時間は約3分だったことが想定されている。さらに遡ると、クォークが閉じ込められ、「クォーク・グルオン・プラズマ状態」、「ヒグス場」が値をもち、クォークが質量を持つようになった時期がある。クォークの閉じ込めに1万分の1秒、ヒグス場の発生が10のマイナス11乗秒、3つの力が統一される「大統一」の時期は10のマイナス36乗秒。火の玉宇宙の始まった時期は10のマイナス39乗秒。この時期の宇宙で、物質(素粒子)が誕生し、このときの宇宙サイズは現時点での宇宙が地球から見えている大きさより100倍程度大きいと仮定すると、およそ1メートル程度だった。

 現在の宇宙は30-50回のサイクルをくりかえしたあとの宇宙であり、ビッグバン(膨張)とビッグクランチ(収縮)をくりかえすが、これを「サイクリック宇宙論」といい、膨張は物質密度による減速効果と宇宙項(アインシュタインの理論)による加速効果の競合で決まる。

 観測によれば、現在の宇宙の物質密度は臨界密度にかなり近づいている。ビッグクランチが始まると温度が段々に高くなり、晴れ上がっていた宇宙は光が通らなくなり、曇りの状態になる。さらに温度が高くなると、合成されていた元素の分解が始まり、陽子と中性子はばらばらになり、クォークという基本粒子に還元され、クォークは質量を失い、ゲージ対称性が回復し、1メートル宇宙に達して潰れていくが、サイクルが二度目以降は実時間のまま跳ね返り、新しいビッグバンが始まる。

 数十回のサイクルでは、初期の段階では膨張、収縮が速く、サイクルを重ねるごとにエネルギーが蓄積されるため時間が長くなるが、現在の宇宙の前の宇宙は30-40億年の寿命だったとの計算値があり、その短期間では地球のような星が生まれることはなく、人類が存在した可能性はゼロ。

 本書を読みながら、レポート用紙の半分は費やしたので、いくらでも説明できるが、あまりに専門的な話が多いので、それらに触れることはやめておく。最後に、宇宙物理学に関与した人、業績を残した人の名を挙げておきたい。

 ニュートン(万有引力)、アインシュタイン(相対性理論、宇宙項)、マックスウェル(電磁波)、プランク(プランク定数)、フェルミ(弱い力の定式化)、湯川秀樹(素領域)、ガモフ(強い力の発見、ビッグバンと宇宙膨張論)、ハップル(赤色変異による宇宙膨張論)、ハイゼルブルグとシュレディンがー(量子力学)、ディラック(場の量子力学)、南部陽一郎(ひもモデルと対象性の破れ、ヒグスメカニズム)、南部・後藤・アクシマン(ドロン物理学)、ゲル二マン(クォークモデル)、朝永振一郎(3K宇宙放射の発見、くりこみ理論、場の粒子論)、ビレンキン(虚時間の提唱)、ウィッテン(6次元のコンパクト化、大統一理論、Dブレーン、行列模型)、ホーキング(ホーキング宇宙論、ホーキング放射)、シャーク・シュワルツ・米谷民明(グラビトン=重力子の発見)、シュワルツ(超ひも理論)。

 知りたい一心での読書だったが、非常に疲れた。


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One Response to “はじめての<超ひも理論>/川合光著”

  1. cornervalley より:

    私も、超ひもをはじめとして、統一理論に関する本を何冊か読んだのですが、いまだに「これだ!」という話に出会えてません。
    もし、世界を一つの理論で説明できたら面白いだろうなぁ・・・
    と思いつつ、ワクワクするような理論が、出てこないでしょうか?

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