宇宙を語るⅡ/立花隆著

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宇宙を語る2

「宇宙を語るⅡ」  立花隆(1940年生)著
副題:人類と宇宙の未来
1995年に単行本
中公文庫  2007年10月初版

 本書はイギリス人のアーサー・C.・クラーク、松井孝典、河合隼雄、司馬遼太郎らとの対談形式をなし、最終章で作者自身の考えを披瀝、この文庫本出版時(2007年10月)の「あとがき」で、単行本を上梓したときとの状況の差、相違を補う意味での補完的言辞を披瀝している。

 以下は各対談者との内容で、なるほどと思わされた部分。

第一章:アーサー・C・クラーク(スリランカ在、SF作家、評論家)との1994年の対談

1.1957年にソ連のスプートニク1号が打ち上げられ、有人飛行を行なったのに対し、1960年アメリカはアポロ計画で月に人を送り込むことに成功したが、以後30年間にわたり宇宙開発は暗黒時代に入った。冷戦終了後は軍備費の相当部分が宇宙開発に費やされると期待したが、そうはならなかった。

2.いずれ、環境汚染産業を宇宙に移転し、地球の環境を保全する方向に向かう可能性がある。

 (世界が充分に賢ければ)。

3.問題は技術革新。衛星の打ち上げに1億ドルものコストがかかるというバカげた運送手段も21世紀中には必ず低コストで再利用できる宇宙船が開発されるはず。

4.1994年に木星に衝突したシューメーカー・レビ彗星の映像から6千5百万年前の恐竜の絶滅が小惑星の衝突によるものだという説を現実として実感した。20世期に入ってからも、1908年にシベリアのツングースに、1927年に同じシベリアに隕石が落ちている。過去から現在に至るまで、太陽系の天体は小惑星の衝突を受け続けている。

 (月面の凹凸も火山の噴火ではなく小惑星の衝突によるもの)。

5.人類はほんの数十万年先でさえ生き延びることはなく、もっと高等な別の生物に進化しているだろう。ニーチェが「人間は猿人と超人とを繋ぐ存在だ」と言ったが、ホモサピエンスはホモ・スペリアリス(超人類)に成長する。

 (発言の趣旨がよく解らない)。

6.地上から3万6千メートルの上空にある静止衛星まで、エレベーターを建造するというアイデアはロシアの技術者によって考案された。この長さを維持できる強度をもつ素材は鋼鉄はおろか、その5倍の強度をもつケプラー繊維でも役に立たない。最近、明らかになった炭素の新物質「C60」なら、もっと安上がりで可能。

7.宇宙における推進力に関し、SFのアイデアとして「ワープ」がある。ホーキングは否定的だが、ウェールズの宇宙論学者の論文ではワープに現実の可能性はあると書いてあった。(ワープとは三次元の空間を別の次元で大きく曲げた上で、宇宙の遠いところにある二点を近づけて飛び移るという航法原理)宇宙を移動するある種の波をつくることが可能で、サーフィンで波頭から波頭へ飛び移るようにして推進力を得るという考え。

8.「ゼロポイント・エネルギー」という考えがある。これは一センチメートル四方の真空に含まれるエネルギーで、地球上の海全部を沸騰させることができるという。問題はそれをどのようにして引き出し、推進力にするかということ。

9.宇宙開発をめざすエネルギーの問題は即兵器として使える。我々人類は運命をコントロールするに足るだけの叡智をもっているのかという疑問。

10.約4万年前にクロマニョン人が出現して以来、人間の脳の容積も細胞の数もそれまでの発達のようには変化していない。そこでハードではなくソフトの部分、脳の使い方の面において進歩を重ね、結果、現在の文明を築いた。この先は、人間がCPU(コンピューター)を脳の付属装置として使うことによって発展していくしかない。CPUの発展の歴史を見ても、ちょうど脳の細胞が2倍、4倍、8倍と指数関数的に発展したのと同じように記憶量においても情報処理においても倍々ゲーム的に急速な進歩が起きる。CPUの発達があらゆるシュミレーションを可能にするため、サイエンスの方法論的革命が起きつつある。

11.生理学者のB・ホールデンは「宇宙の謎はわたしたちの想像を超えているだけではない。わたしたちが想像することのできる範囲を超えているのだ」と言った。宇宙への進出は部族的な人間意識から離れて地球人としての意識を発展させつつある。言葉を換えれば、我々は地球人から宇宙人へ向けての進化の途上にある。

第二章:松井孝典(東大大学院教授/専門は惑星物理学アストロバイオロジー)との1990年の対談

1.月から持ってきた石と地球に落下した隕石から、太陽惑星の起源が約46億年と想定された。

2.小惑星との衝突は、太陽に近く公転軌道半径が短い星ほど少なく、木星以遠の惑星は軌道が大きいため多くの微惑星との衝突があり、巨大化した。が、具体的なプロセスは未解明。

 (天体のサイズも関係しているのでは?)

3.火星と木星のあいだには無数の小惑星が存在する帯状の小惑星帯が存在するが、これが惑星に成長できなかった理由はよく判っていない。

4.人類は宇宙を認識するために生まれてきた。

5.ソ連は宇宙ステーションをもち、ソ連の人間のほうがアメリカ人より宇宙滞在時間ははるかに長いだけでなく、その場での数々の実験の上でもアメリカを凌いでいる。そのうえ、ソ連のスペースシャトルの方が価格もはるかに安い。

6.日本の大学には宇宙工学科が全くない。アメリカだったら、州立大学にはすべてある。日本人の宇宙関係のサイエンスの研究者はアメリカの100分の1、ヨーロッパ、ロシアの10分の1に過ぎない。

7.宇宙への関心という点で、企業、一般人、ジャーナリズムは強く意識してもっているのに反し、政治家と官僚はほとんど関心を示さない。日本の科学技術庁とは名ばかりで、名にふさわしいことは何もやっていない。政治家に共通するのは科学に弱いという点である。

 (宇宙産業のみならず、海底探査の面でも、今でこそチタンを使った調査を行なうようになったが、この分野でもフランス、アメリカに遅れている。海上自衛隊の潜水訓練も初めはアメリカの潜水技術に依存して行なわれた。CPUとインターネットの時代を迎え、これに能力的に対応可能な政治家は日本にごくごく僅か)。

第三章:河合隼雄(ユング心理学者、文化庁長官を経、2007年に逝去)との1987年の対談

1.火薬や羅針盤などを世界に先駆けて発明したのは中国人だが、これを体系化することを怠り、西洋に遅れをとった。

2.一神教の西欧で科学が発達したのは、一神教ゆえに一つの理論に完璧な体系があるはずだという強固な確信があったため、必死になってそういう体系づくりに取り組んだ。だから、宗教が科学の進歩を妨害したこともないとはいえないが、逆に、一神教が科学の発達を支えた面もある。とはいえ、科学が発達を遂げるにつれ、キリスト教にとって強烈なマイナスインパクトを与えてしまった。

3.人間には、科学的にも、不可知な部分への尽きない関心がある。そこに、神がかり的なもの、あるいは宗教的な説明を加える隙間がある。

4.人間の一般的な認識能力はニュートン力学の世界ぐらいがちょうどレベルに合致する。相対理論や量子力学は具体的にイメージすること自体が難しい。理由は数学的な証明だから。

5.宇宙からの帰還者の話に「神を感じた」「聖なるものを感じた」「戦慄と魅力の両方を含んだ神秘を感じた」という感想が多い。

 (オバケがいると言われる土地や建物に行けば、人間はだれもがそのように感ずるもので、人間の脳に錯覚や錯誤はつきものである)。

第四章:司馬遼太郎(1923-1996)との1975年の対談

1.空海は「世に始まりも終わりもない。無限のものが循環するようにぐるぐる回っているだけ」という言葉を残している。空海は「円蓋も灼燻として砕け折れぬ。いわんや吾等、体を稟(う)けたること金剛に非ず。形を招けること瓦礫の如し」と天蓋も崩れ落ち、焼け焦げて破壊されていくことを予測、生きとし生けるものの儚さを説いている。

2.ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、いずれも砂漠という地表環境としては悪いところで生まれた。

 (現在も、貧しい土地ほど宗教の信者は多い)。


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