無実/ジョン・グリシャム著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

無実 上 無実 下

「無実」上下巻  ジョン・グリシャム(1955年生/アメリカ人)著
原題:The Innocent Man
白石朗訳  ゴマ文庫 2008年3月初版

 

 作者は本来サスペンス作家で、このようなノンフィクションを書いたのは初めてらしい。

 「渾身のノンフィクション」との帯広告に惹かれて入手したものだが、オクラホマ州の小さな町、エイダで起こった少女レイプ殺人事件を採り上げた内容。

 読み進めるうち、警察捜査陣のあまりに乱暴、粗雑な姿勢だけでなく、白状を強制するためにかつてヴェトナム戦争で拷問時に使った、二人が組みになり、一人が威嚇する立場で暴言を吐き、もう一人が慰め役で「はやくしゃべっちまって、楽になれ」などという手口はあまりに古い手法で、ばかばかしさに次第にうんざり、結局は読書を続けることを放棄してしまった。

 細かく書きすぎているため、展開にスピードがなく、そのことも読書継続への意欲を失わせ要因。

 白人種には、概して、こうしたしつこさ、というより、「言わずもがな」を書きすぎるきらいがある。読者に細大漏らさず理解させようとするあまり、説明過多に陥る傾向があると言った方が当を得ているかも知れない。

 これは多民族国家に共通する性癖というべきで、日本人同士なら1の発言で10を伝えられるのに対し、アメリカ人は1を伝えるのに10の発言をせざるを得ないという社会のありようが背景にある。だから、アメリカ人はスピーチが学校教育に採用されている。自己主張する術を学んでおかないと、社会に出てから生き残れないからだが、そうした傾向が文章にも出てくるのではないだろうか。とはいえ、同じアメリカでも、州により、地域によって住民の心栄えは異なる。

 むろん、執拗であっても、しつこくても、内容次第では読むことに難渋しない書もある。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ