日本人だけが知らない日本人のうわさ/石井光太著

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「日本人だけが知らない日本人のうわさ」 石井光太(1977年生)著
副題:笑える、あきれる、腹がたつ
2010年2月20日 光文社新書初版 ¥840+税

 海外に滞在中に小耳にはさんだことや、資料などから得たことを、深く調べもせずに、風聞や噂として、きわめて気軽に書いたという印象の拭いがたい内容。

 どんな国でも、民族にでも、真実の姿とイメージからの勝手な観測や誤解がつきもので、イギリス人にだって、アメリカ人にだって、かれらの知らない風聞みたいなものは幾らでもある。

 タイでの噂というテーマで、「火のないところに煙は立たないというように、タイに少女を買いに行く日本人男性がいるから、そういう事実をベースに誤解が生まれ、そこから風聞や噂が語られる」というけれども、火があって煙が出ているのはタイにおいてであって、そこに自分の娘や息子を売る親、あるいは自分自身を売る男女までがいたし、今でもいるだろうことが、すべての発端ではないか。日本人にだって自分の娘を売った時代がある。

 イギリス人の男に、「日本の女は割れ目が横に入っているから、縦割れの女からは得られない快感が得られる」などという噂話があったというが、それはダーウィンやニュートンを生んだ国の人間とはとうてい思えぬ知的レベルの低い、知性の欠落した人間というしかない。ただのバカ、アホである。

 入国カードのSEXの欄にはほとんどの場合、「M」(男)or「F」(女)という文字が入っていてチョイスになっているし、日本人を乗せる日本発の飛行機ならまず間違いなく日本人クルーが乗っているから、記入の仕方のわからない人はじかに訊くことができる。

 「SEXの欄に一週間のセックスの回数を書く日本人が跡を絶たなかった」という話は「つくりばなし」であろう。

 1977年生まれの作者が敗戦直後に生まれた「戦争花嫁」のことをじかに知っているはずはなく、誰かが書いた本からの知識をそのまま書いたのではないかと思われる。

 後追いした日本人女性がアメリカの港に到着しても約束した相手が迎えに来ず途方に暮れたとか、迎えてはくれたが既婚者だったとか、あっという間に離婚されたとか書いているが、日本女性を結婚相手にした大半のアメリカ兵は黒人であり、日本では駐留軍でいたからこそ食料や物資を女に与えることができたが、帰国すれば貧民窟街に居住する底辺の人々であって、日本女性はやむなくできた子供を抱いて男と別れ、反対を押し切ってアメリカにやってきた以上日本に帰るわけにもいかず、多くはデトロイト、シカゴでウェイトレスをして子供を育てたと聞いているし、そういう何人もの女性に私はじかに会っている。

 「発展途上国に出向した日本人企業戦士は例外なくだれもが運転手つきの自動車にふんぞり返り」というイメージで語られることが多いが、途上国のほとんどは国際自動車運転免許にかかわるジュネーブ条約に入っていないため、国際免許が使えないという現状があるからで、自分で運転したい出向者だって少なくはない。

 そのうえ、外国人が運転する車が土地の子供を轢き殺してしまったとしたら、その土地の人々に取り巻かれ半殺しの目に遭うことが多発していたという現実もあったし、今もあるだろう。だからこそ、運転手つきの車を利用するよう現地のボスから指示されるのだ。

 「ロリコン趣味」が日本人男性に多いかのような一文があるが、「ロリータ」を書いたのは西欧人であり、西欧にはロリコン趣味の会員組織まで存在し、世界における少女買春の可能性にかかわる情報を相互交換していることがオランダのTV会社に暴露され、本にまでなっている。

 「海外で日本人観光客がぼったくりの対象になっている」のは、日本人の甘さに原因があり、日本人の悪い癖は物の値段を自国の値段と比較すること。日本の物価と比べたら、どこに行ったって、安いに決まっている。

 総じて、本書は内容的に採り上げたテーマの次元が低いし、調査が行き届いていない。

 「おもしろおかしく書いて売れればいい」、そういう思惑が透けている。


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