野生の思考/クロード・レヴィ=ストロース著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

野生の思考

「野生の思考」
クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss/ベルギー生まれ、1959年からコレージュ・ド・フランス文化人類学教授)著
訳者:大橋保夫
原題:La Pensée sauvage(仏語)
英題:The Savage Mind
1976年3月30日 みすず書房より単行本初版 ¥4800+税

 本書から得た驚きは作者が世界各地に散る、いわゆる未開民族をときに自ら訪ね、ときに多くの文献や資料からチェックしていること、対象となった民族は北米大陸の種々のインディアンはもちろんエスキモー(イヌイット)も含まれ、中南米から南太平洋の諸島、ニュージーランドからボルネオ、オーストラリア、ニューギニア、アフリカのブッシュマンから、タンガニーカ、ケニヤまで及んでいることで、チェック対象が膨大な数におよび、選択にエコヒイキがないことである。

 ただ、難点をいえば、一般人にとっては内容が難しく、かつそれほど興味を惹かれるものではないこと、私自身、「野生の思考」というタイトルに惹かれ、思わず入手することとはなったが、ほとんど飛ばし読みに終始した。つまり、正直いって、読書を真面目に続けさせる内容のものではなかった。

 そういうなかから、多少でも参考になったものといえば、各未開民族ともに共通するのは自分たちの生活に直接寄与しない、関係しない動植物に関しては呼称さえ与えないケースが多いこと。獣の狩猟に成功した場合、食べられる部分が、民族によるが、男女や子供、村長によって違うこと、薬草に対する執拗な調査姿勢。

 オーストラリアでの悲劇の例として、1934年、30ほどの現地住民に属する生き残りの900人が政府の設けた収容所に、ごちゃごちゃに放り込まれたとき、喜んだのは宣教師ばかりで、ここに押しかけ、結果的に混乱しただけとある。かつて、別の本からは、「タスマニア島先住民の全てがイギリス人によって絶滅させられた」との情報を得ている。そういう子孫が日本の捕鯨船の邪魔をする連中のバックアップをする資格があるのかと問いたくなる。

 訳者の「あとがき」には、「本書は1960年代に始まったいわゆる構造主義ブームの発火点となり、フランスにおける戦後思想史最大の転換を引き起こした著作。本書の直接の主題は文明人の思考と本質的に異なる未開の思考なるものが存在するという幻想の解体」とある。これまで考えられてきた「未開人特有の思考」はかれらのみならず、我々文明人の日常の知的操作や芸術活動にも重要な役割を果たしており、むしろ、野生の思考と呼ぶべきものである」という話には納得がいく。

 なにより驚いたのは、初版が1976年で、2009年までに34版を重ねている事実であった。

 たまたまのことだが、昨日、TVでニューギニアのある未開族の男らは肉を一切食べないにも拘わらず、筋肉隆々の体力を誇っているという。調査の結果、かれらの食べる草のなかに蛋白質づくりを行なう「窒素固定菌」が含まれていることがわかり、世界から注目されるようになっているらしい。

 逆に、ニューギニアの奥地に居住する未開人のなかには人肉の食習慣がなお継続し、そのために狂牛病と同じ症状を呈して死に至るケースもある。同じ種類の動物の肉を口にすることがこの病気を誘発するからだ。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ