トリアングル/俵万智著

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トリアングル

「トリアングル」 俵万智著  中公文庫
2004年単行本   2006年9月文庫化初版

 1987年に世に出た「サラダ記念日」があまりに衝撃的で、それまでの和歌のイメージを根底から覆したため、そのときの衝撃が、「カンチュウハイ」や「夕焼けている」などという言葉ととともに、いまも胸の奥にくすぶっている。当時、彼女の著作が出れば必ず買って読んだものだ。

 あれから、18年の歳月が流れ、この作者がどのように変貌したのか興味をもって、久しぶりに作品を手にとった。

 第一印象は中年に近づいて、ずいぶんおとなしくなった、平穏になった、という印象で、なかに紹介される和歌も往年の迫力にはとうてい及ばず、むしろ、いきがらずに、現在の自分らしく、淡々と物語や俳句を紡いでいる印象。

 小説とはいえ、百パーセント空想だけで書けるものではない以上、内容には彼女自身の経験も含まれているとは思うが、自分が信ずる道を外部からの牽制や助言や批判には耳を貸さず、まっすぐ歩む、そういう姿勢を感じた。

 デビューが鮮烈すぎると、あとが大変だということは、作家のみならず、音楽家にも、歌手にも、タレントにもいえることで、それがために思わぬ苦労をすることもある。

 いまや、子をなし、一つの家庭をもって、仕事さえあれば、なんでもやってやるという気概さえ失わなければ、将来ともに安泰、いい作品が書けるのでは。

 驚いたのは、「男が朝勃ちするということは器質的に問題はなく、勃起能力があるということで、問題はむしろ、私のほうにあるのかも知れない」という下り、こういうことをあっさり書ける年齢になったんだなと、あらためて感心してしまった。

 ただ、英語で「Triangle」と書きながら、あえて「トリアングル」という表題に固執した理由がよくわからない。主な登場人物が自分と二人の男性(一人は独身の年下、一人は家庭持ちの年上)で、三人による物語なのだから、「トライアングル」そのままの題名でよかったのではないかと。


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