ほんとうの話/曽野綾子著

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ほんとうの話

「ほんとうの話」  曽野綾子著
1977年-1979年まで「暮らしの手帳」に書かれたもの
1986年 新潮社より単行本
1992年 新潮社より文庫化初版

1.社会にあっての苦労は家庭内のトラブルよりずっと御しやすい。むろん、企業にあっては上司とのいざこざや不快に遭うこともあるが、家庭にあっては味わえない胸の震えるような感動的なことに出遭うことがしばしばあり、専業主婦はそういう感動とは一生無縁に過ごす。したがって、結婚とは、それほど羨望の的になるようなものではない。

2.妻を専業主婦として庇護するのは夫であり、ために主婦の生涯は子育て、家の掃除、洗濯、料理だけに専念する立場に置かれ、結婚生活は総じて面白みのないものになるが、もし夫が妻を働きに出して、より多くの未知を知る機会を与えれば、やさしい夫として考えるのだろうか。あるいは、妻が外で不倫を働くチャンスを与えることになるのだろうか。これはこの世の「からくり」とでもいうべきことで、あらためて判らなくなる。(子を育てることは一大事業だし、会社の仕事などよりはるかにおもしろいと思うのだが・・)

3.「沖縄の人が米軍に守ってもらわなくていい。早く出ていってくれ」と言うのは勝手だが、その結果がどうなろうと、責任をとる覚悟があるのならば。(「平和が好き」を旗印にして選挙に挑む社会党にも同じことが言える。自分の国を自分の力で守ろうとしない国など世界に例がない。永世中立を国是にしているスイスだって正規の軍を維持している。これについては、後段で作者が詳細を語っている)。

4.人間、17、8歳になれば、挫折や困窮や失恋や受験などを通じ、人生はそううまくいくものではないことくらい判っているくせに、社会に対してだけは、時に王様のように野放図な要求をするし、口にもする。(兄弟が少なく、兄弟喧嘩の経験もなく、過保護に育てられた子供には基本的に根性が欠落しているし、我慢とか忍耐とかいう経験も希薄。これが信じられない犯罪を生む温床になっているのではないか)。

5.家族も社会もいびつで歪んでいるのが、世界的に共通している。差別感覚は世界中どこにでもあり、それは価値観とも同義語である。それが個性、英語でいうアイデンティフィケーションを生む。日本人にはこれがきわめて希薄。(「言葉ができないから、海外に一人では行けない」という人はごまんといる)。

6.自分を識別する最大のエネルギーはひがみ根性である。ひがみ根性のない人間など影のない人と同じで、奇怪な存在。

7.欠陥のない品物は喜ばれるが、欠陥のない人間がもしいたら、誰もが敬遠するだろう。人間は普遍的にあやまちを犯す動物である。

8.葬儀に高い費用をとられるのはバカバカしい。宗教人が金儲けに心を砕くのは堕落であり、祈ることが金銭的利益に関係するのは邪道である。人間は生存中に周囲に迷惑をかけるのに、死後まで迷惑をかけるのは普通の神経ではない。(墓をつくるほど無駄な浪費はこの世にない)。

9.未開社会では葬儀は特殊な日であり、村人が集まるが、ほかに楽しみのない人々にとってはエンターテイメントであるからだ。(葬儀は生きている人のために存在する儀式であり、死んだ本人には関係がない)。

10.「浮世の義理」とか「香典」とかいうものは社会から棄てたほうがいい。葬儀される主体が家族を支える若い夫であった場合、子供を残された主婦に多めに香典を包む心情は悪いことではないが、金に困っていない相手に儀礼的に高額な香典を包むのは賢明な人間のすることではない。

11.この世に生きる以上、損得はつきもの、損をしたときだけ目くじらを立てるのは片手落ち。相反する可能性を承認しなければ、現実問題として生きていけない。動物と人間の違いは損をすることを受容することである。

12.権利は他人が持つことを認めることであり、義務は自分が遂行すればいいもの。各人がこれを守れば、社会はスムーズに動く。

13.報道は書く人間の頭の中でふるいにかけられる以上、「知る権利」を阻害されざるを得ない。(新聞報道、TV報道に対し、何の疑問も感じない側の人々に責任がある)。

14.日本におけるデモや闘争に、警察官が発砲しないことを外国人は奇異な目で見る。そういう環境で育った記者が外国の危険地帯で命を落とすのは、日本における状況が外国でも存在するという錯覚。(日本国内の衛生観念にも同じことが言えるし、買い物で釣銭を数えないのは日本人だけという奇異を狡猾な外国人はみな知っている)。

15.軍事政権は一つの状態を示しているだけであって、善悪の対象ではないが、日本のマスコミは総じて「軍事政権は悪」と決めつけるため、日本人は誰もがそう思っている。これは間違ったものの考え方への意図的な誘導であって、マスコミの本来あるべき姿ではない。(太平戦争に誘導した東条英機を中心としたアホな日本陸軍のかつての横暴が日本人の脳裏から消えないということはある。とはいえ、軍事力を背景にもつことの意味は甚大である。軍事力を使う必要はないが、背景にあれば、発言権は強いものになるし、北朝鮮との交渉も早期解決が図れるのではないか)。

16.人間は容易に悪くも狡くもなる。一国の支配者から庶民まで例外はいない。

17.(当ブログでも2008年8月30日に書評した)マグリット・デュラス(フランス人女性)の作品(愛人)には閉口した。こういう幼い作品が人手をかけて翻訳される必要はない。(私は表紙の可愛い容貌に魅せられて入手したが、確かに仰る通り)。

18.「考え方が新しい」と言われたいという軽薄さ。

19.日本は今かつてなかったいい時代を迎え、謳歌している。現今、この国には乞食、結核、強制売春、戦争、飢餓、階級制度などがない。とはいえ、どの国にも他国にない善いものと悪いものとがある。

20.若い娘がブランドものを身につけ、そのうえ、そのデザイナーの広告をして歩く神経が理解できない。(流行に弱いのが日本人、他人と同じでありたいという日本人特有の資質。そのかわり、好みはすぐ変化する)。

21.顔の美醜や器量の善し悪しというものは先天的なもので、どうにもならない。(現今では、若い人は男ですら、美顔のため整形を簡単に行う)。

22.日本人以外の人々は例外なく、「生活の原型は抗争にある」と考えている。永世中立を標榜するスイスですら、スイス連邦法務警察省が「国土の防衛はわがスイスに昔から伝わっている伝統であり、わが連邦の存在そのものにかかわるもの。そのため武器をとり得るすべての国民によって組織され、近代戦用に装備された強力な軍隊のみが侵略者の意図をくじき得るのであり、これによって我々にとって最も大きな財産である自由と独立が保障される」と書かれ、さらに「すべて人々は平和を望んでいるが、にも拘わらず、戦争に備える義務から解放されることは決してない。スイスは他国への侵略の意志は決して持っていない。ただ、生き抜くことを望んでいるだけだ。世界は我々の望むようにうまくいってはいず、恒常的に危機が潜在している。自由と独立、平和は断じて努力なしに与えられ保障されるものではない。自国の力で、防衛力で勝ちとるものである」と主張、「民間防衛」という小冊子には戦時の具体的な出処進退が、食料、燃料の用意をはじめ、衣服のあり方、負傷者への介護、救出方法などにいたるまで細々と書かれている。(欧州各国に総じて同じような思考回路がある事実は、互いに国境を接していることからの抗争が長期にわたって続いたための教訓であり、残念ながら、日本人には太平世戦争で負けた後遺症が未だに払拭されずに、外交に発言力のない実体が続いている)。

 世界には、我々には理解不能の文化や社会形態や宗教や物事への考え方がある。国境を接していない日本人の最大の欠点はそういう事実から招来される危機に対して無防備であること。そういう事実が世に存在することを僅かにも考えることのない甘い民族。

 (平和が好きと言ってるだけの、おちゃらけた精神は、島国の平和ボケにしか発想できない。自国がかつて他国を侵略し、無辜の市民を殺したり、強姦したりしたことがある歴史をもつくせに。日本人の悪い癖は「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いたり、喉元過ぎれば熱さを忘れる」という性癖で、他国の人も同じだと思っていること。日本の演歌に対し、韓国では怨歌というが、中国と国境を接していたただけでなく、半島という地形が寸詰まりであったため、逃げが出来ず、歴史上長期にわたる侵略やいじめに耐えねばならなかったからであろう)。

 (日本人はたった一度の敗戦に懲りて、もう二度と戦争はごめんだと思っているが、ドイツ人が僅かな期間をおいて第一次、第二次大戦を引き起こした根性に思いを致してみるタイミングにきているのではないか。太平洋戦争に失敗したのは相手のサイズ、全物量、エネルギー、武器と兵士の質などについて信頼できる情報を得ることに当然あるべき熱心さがなかったからだ。日本は今せめて、自衛隊ではなく、正規軍をもつべきだし、もし可能なら核保有国になるべきだ)。

 政治も、経済も、国防も、自分の精神状態も、常に最悪の状態を想定して対応しようとしないのは虚偽そのものである。そこには祖国を守り、国民を守るという心情が欠落している。人間は善良な生き物ではない。
 (日本の新聞にはグローバリズムという言葉がしきりに躍るが、日本人のほとんどはグローバリズムを理解できずにいる)

 曽野綾子はすごい女性だ。こういう人に日本のリーダーになって欲しい。


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2 Responses to “ほんとうの話/曽野綾子著”

  1. 鬼が島 より:

    記述されている殆どと、私の記事は同意見です。
    ジャパニーズの思考の甘さは異常です・・・ 
    反面、過労死するほどの社会・・・日本経団連に支配されつくした国民です。
    国民同士もKYなどと・・・相互に言論を封じ込めている・・・欺瞞の塊としか言いようがありません。
    常に書いていますが、口先で平和を唱えるだけでは平和は維持できないという事です。こういう事を書くと途端に反発される・・・この精神状況は「ある種の狡さから来ていると思考します。 自分は安全地帯に居たいのですよ。
    国民の多くは「自分の日々の生活が維持されれば、政治などどうでも良いと思考しているのでしょう」

  2. Miroku より:

    うちの犬に限らず、犬は「見えないものは、無いもの」と考えるようです。いたずらして破壊したものを、近づけると目をそらせます。
     まぁ、それで済めば良いのですがね・・・。
    「神道」は、祝詞をはじめ言霊の世界ですから、日本人の無意識の宗教感なども影響しているのかも知れません。
     まぁ、それで済めば良いのですがね・・・。

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