イギリスとヨーロッパ/細谷雄一編(総合書評)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

イギリスとヨーロッパ

「イギリスとヨーロッパ」 細谷雄一編 (10人の国際政治専門家による執筆)
勁草書房 単行本 2009年1月25日 初版  ¥2800+税

総評

 本書はイギリスと欧州大陸との過去200年間の関係に的を絞って執筆されたものであるが、そのような関心が強いために生まれた書といってもよい。

 主に、イギリスが七つの海を支配していた時代が終焉を迎え、世界大国としての地位を失い、同時にポンドという通貨が下落した後、イギリスの目と鼻の先に、欧州共同体(EC)という新しい思想をベースとした経済的、政治的巨大ブロックが出現、過去の歴史から引きずっている矜持とプライドを棄てきれないイギリスがどのように向き合い、どのように関与していくかは、イギリスにとってのみならず欧州大陸各国にとっても、等閑視できない問題だったはずで、そのあたりの対応、処理、出処進退に関し、私としては強い関心をもった。

 本書は私が予測した以上に、関心の的だった諸問題を詳細に、かつ緻密に解説し、疑問の余地がないほど理解が進んだ。

 また、イギリスの代々の首相だけでなく、欧州各国の首相についても、それぞれの人柄や個性がかなり赤裸々に浮き彫りにされている点にも読み手を惹きつける魅力に富んだ作品に結晶した理由があったと思量する。

 「あとがき」には、「イギリスは今後も自国の利害に基づく政策を現実的に推し進めていくだろう。イギリスはEUという環境のなかでリーダーシップを得ることは難しい。EUが多数の国家から成立している以上、イギリスが目指すヨーロッパ像に引きつけるための理念と、実現していくことには困難がつきまとうだろう」と結んでいる。

 興味のない人にとってはただの学術書ではあるだろうが、労作であることに間違いはない。

 東西冷戦終結後、雪崩を打つ打つようにして東欧諸国がユーロ圏内に入ったものの、急激な人口増に対応しつつようやく軌道に乗りつつあったとき、アメリカ発の金融恐慌の大波が欧州を含む世界を襲った。ために、ソ連邦時代よりましな生活が出来るとばかり期待していた東欧諸国の民は「ソ連邦時代のほうがよかった。仕事が失われるようなことはなかった」と愚痴るのを聞き、アメリカの犯した罪の深さを痛感させられた。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ