バチカン・シークレット/ベルナール・ルコント著

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バチカンシークレット

「バチカン・シークレット」
ベルナール・ルコント(フランス人ジャーナリスト)著
訳者:吉田春美
2010年6月20日河出書房新社より単行本初版
¥2、200

 

 バチカンはカトリック教会の総本山としてイタリア、ローマの一部に君臨する世界一小さな国(東京デズニーランドより一回り小さい)、ホワイトハウスやクレムリンとは異なり、メディアの決まりに従わない唯一の場所でもある。

 「組織としてはキリスト教がユダヤ教から発した2000年以上前から存在するが、ローマに場所を得たのは紀元600年前後のこと。ただ、本書では過去1世紀の歴史にみられる主要な謎を紹介する」とのことわりを目にしたとたん、「長い歴史に裏打ちされたバチカン」をイメージしていた私としては本書を入手したことが失敗だったことに気づかされた。

 過去100年の間に唯一、関心をもったのは第二次大戦時のドイツによるユダヤ人の扱いに関してで、当時、バチカンはナチスのユダヤ人殺害について実態を非難するうえで言葉の選択に苦悩したという。

 さらに、バチカン教皇にとって恐怖だったのは欧州と世界に無神論の共産主義がとめどなく拡がることだった。現実、大戦後、クレムリンの支配下に入った国も人も半端な数ではなかった。1949年には毛沢東が中国革命の勝利宣言をし、クレムリンの支配下に入った国々のキリスト教司祭や教徒に対する不当な逮捕、裁判、投獄も始まった。

 ポーランドはクレムリンにいじめられたが、ポーランド人のヨハネ・パウロ2世はポーランドを訪問、多くの国民が教皇の訪問を歓迎するために現れたものの、クレムリンを刺激もした。

 1987年、ミハイル・ゴルバチョフが事態を一変させ、ソ連邦は崩壊。

 話変わって、戦後、バチカンは「避妊を自慰行為と同等」と否定、つまり子作りを前提としない性行為はむろん、中絶も悪と決めつけた。男同士の結婚が認められるアメリカ社会はもとより、性に関して緩みが促進されている世界の風潮をバチカンがどう見ているかは書かれていない。

 かねがね思うことだが、両親が一つの宗教の教徒であれば、子供は自分で判断できる年齢に達する前に洗礼を受けさせられ、そこに信教選択の自由などあり得ないと思うのだが・・・・。

 はっきり言わせてもらうが、キリスト教徒以外のほとんどの人にとって、本書は面白くはないだろう。

 過去、戦争があれほど広範囲に、かつ殺人にためらいがなくなって殺傷力が強化され、拡大し、多発したのは宗教あればこそだったと思うのだが。


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