ニューヨーク散歩 街道をゆく39/司馬遼太郎著

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「ニューヨーク散歩」 司馬遼太郎著  朝日文庫

 ニューヨーク在住の日本文学を研究する外国人(日系人を含む)との対話、エピソード、日本文学の歴史渉猟など、該博な知識をベースにいつもながらの筆力、表現力でさいごまでストンと読まされてしまう。
 ただ、外国人が近松門左衛門、平田篤胤、源氏物語、古事記、徒然草、好色五人女、奥の細道などを、研究者なのだからあたりまえといえばあたりまえだが、精読している事実。

 そのことに驚嘆し、畏怖もし、恥ずかしくも思った。

 後に知ったことだが、上記の文学書は同時代の外国の文学をはるかに凌駕していて、世が世ならばノーベル文学賞ものだという。源氏物語などは世界で初の小説という作文方式を世に問うたものらしい。この国の平安朝時代にもすごい女性作家が存在したということだ。

 紫式部の「源氏物語」、小野小町の「春は曙」、吉田兼行の「徒然草」、鴨長明の「方丈記」などはノーべル賞にノミネートされていいという。

 ただ、遠慮なくいえば、本書の著者とアメリカとは似合わない。

 別の本でアメリカを書いたものを読んだことがあるが、精査不足、突っ込み不足、独断ばかりが目立って、読むに堪えなかった。間口を広げすぎた祟りだと思う。

 作者が司馬遼太郎ならば、いかなる作品も最低でも10万冊は売れる。出版社にとっては、文字どおり「ドル箱」、読者としていわせもらえるなら、もう少し内容の充実に配慮して欲しい。本書にしても「ニューヨーク散歩」というタイトルも表紙の写真も内容と相容れない。ニューヨークそのものについては何も書いてないのだから、きわめて詐欺的である。


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