二十歳のころ(2)/立花隆著

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二十歳のころ2

「二十歳のころ」(2)
東京大学教養学部 立花隆教授ゼミ共同制作
新潮文庫  2002年1月文庫化初版

 同書(1)が1920年から30年代生まれの人物が集中登場していたのに比べ、(2)は1940年生から現在二十歳という幅の広さがあること、トータル37人プラス2人という構成だが、「ヘルメット」と「ゲバ棒」と「全共闘」が共通の話題となっているケースが多く、(1)と(2)の登場人物構成に一工夫必要だったように思われた。

 当事者にとって学生時代の闘争劇がいかに深刻なものであったかは、同じ時代に学生であった人それぞれではあろうが、本書のなかで集中的に語られると、はっきりいってうんざり感が頭痛をもたらす。

 ただ、登場者の職業が多岐にわたり、宮大工あり、作家あり、学者あり、女優あり、漫画家あり、弁護士あり、棋士あり、コピーライターあり、音楽家ありと、話の内容によっては途中でやめられなくなるものと、眠くなるものと、極端に分かれている。

 気になった点、面白かった点、学んだ点など、以下、列記する。(  )内は私のコメント。

1.石弘之(東大大学院新領域創成科学研究科、教授)
 「ワトソンとクリックのDNAモデル。二重ラセンの発見以来、生命というものが実は一種の科学反応であることが解ってきた」
 「公害問題、薬害問題が出ると、必ず、科学者なのに御用学者が現れて、問題をすりかえようとし、決着まで要らぬ時間をかけてしまう」
(あらゆる業界に御用学者はいる。教育者、学者に悪いやつは絶えない。研究費欲しさの欲であろうが)
 「今の若い人は脳細胞の栄養失調。本を読まないから」

2.立花隆(東大教養学部教授)
 「常に社会の外にあって、社会から離れた場所に自分の身を置くようにしてきた。本当の批判者であるためには内側より外側に身を置いているべきだという信念。反社会的な人間の創造。確信犯的アウトサイダー」
(海外にいて、できれば、先進国と発展途上国の両面から日本を眺めるのも悪くない)。

3.米長邦雄(棋士:永世名人)
 「20歳までは95%母親の影響を受けるが、20歳で母親から卒業する」
 「時間は一日毎に24時間とられてしまう。そういう感覚でいたほうがいい」
 「勝負事は1対1の関係。男と女の関係は1対(つい)の関係で、自分を棄てて奉仕すること」
(さすがに女にもて、女をよく知る男の発言)。

4.秋山仁(数学者)
 「屈辱を敏感に感じる心をもつこと。失敗しても、悔しさを人一倍感じることが次の飛躍のバネになる。重要なのは幼児教育と家庭教育。感性を伸ばすための」
(学校教育に期待過剰なのが現代、これを変えていかないと、日本に未来はない。家庭にあって、子供が5歳までに「勉強」という言葉を使わずに、「知ることの喜び」を教えることができれば、以後子供は黙っていても勉強するし、自分でものを考えるようになる)。

5.佐藤学(東大大学院教育学研究科教授)
 「不幸な子のそばには必ず成熟しきれない親がいて、大人になれない教師がいる」(同感)
 「当時、自己否定、自己実現、自己変革、などの言葉が生まれたが、いやな言葉だと思った。キンキンした黄色い言葉というイメージ」(そうかなぁ!)
 「成熟した人間は他者の世界でも生きられる。状況を複眼的に見られる。状況のなかで自分を相対化でき、基本的に寛容によって裏打ちされている。寛容とは異質ものに対して耐える力をはぐくむ。学ぶ力、問う力、極める力など、大学のなかで蘇っていくことでしか、大学も学問も活性化しない」
(自己形成、自己完結、自己閉塞など、あまり愉快でない言葉が自己のあとにくっつくのも確か)

6.坂本龍一(音楽家)
 「学生時代から一生つきあう友達なんているのか?ただダべる相手でなく、万が一のとき頼りになる人っていうのは、結局、友人の場合より、家族の場合の方が決定的に多いのでは」 (だろうね)。

7.吉永良正(サイエンスライター)
 「辻村公一曰く、科学には方法があって対象を立てる。哲学には方法がなくて立場しかない。哲学ほど学ぶことを勧めてはならないものはない。哲学は学んで教えられるようなものではない」

8.西和彦(アスキー特別顧問)
 「WHYは過去に対してしか問わない。IFは未来に対して問う」

9.古川昭夫(塾SEG代表)
 「恋愛はエネルギーが要るから、若いときだけ」
(大きなミスジャッジ。偏見。自分だけそう思って、自分にだけそれを課せばいいことで、書籍のなかで公言する必要はない)。

10.滝本太郎(弁護士)
 「太宰治、芥川龍之介の小説は贅沢。食うに困って書いた人の多かった時代、彼らはそういう悩みをもったことがない」(にも拘わらず、二人とも最も贅沢な自死を選んだ。なぜ?)
 「現在は、衣食足りて礼節を知らず、罪を忘れる」

 立花隆教授が「あとがき」で「自然界のいかなる物質系もエントロピー増大の法則(熱力学の法則で、あらゆる秩序が自然に解体に向かう法則)を免れない。人間集団の場合も絶え間ないエネルギーの補給がなければ、組織、システムの維持ははかれない。

 正直な感想として、(2)は(1)ほどの充実感はない。


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