白い牙/ジャック・ロンドン著

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「白い牙」 ジャック・ロンドン(Jack London/アメリカ人/1876-1916)著
原題:White Fang  訳者:白石佑光
1958年11月10日 新潮社より文庫化初版 ¥552+税

 本書は1906年にアメリカで発表された狼に関する小説。

 舞台はカナダ北西部を流れるマッケンジー川周辺。

 凍てつく土地にエスキモー犬にソリを引かせる二人の男、夜は火を燃やしてキャンプするが、深い闇のなかにギラギラ光る目が円陣になって迫ってくる。犬たちは怯え、不安と恐怖におののく。狼たちは飢餓に襲われつつ、どこまでもこの一団を追尾する。毎夜、一頭ずつ犬が消え、ついには男の一人も犠牲となる。

 上記は本書の初めを飾る飢えた狼の群れを描いた部分だが、この部分が本書のなかで最も感動的で、かつ魅力的だが、本筋ではない。

 本筋は4分の1だけ犬の血を、4分の3は狼の血を引く狼の子が主人公で、母狼とともに野生に生きてきたため、居ずまいにしても、たたずまいにしても、動くものに対する反応にしても、すべてが狼そのもので、凄みと獰猛さを身にしている。

 この狼の子をある男が時間をかけて家畜化していく過程を描いた内容で、そういう状況があり得ることは理解可能だが、狼そのものについての生態学的な正確さに関してしばしば疑問を感じ、作者の狼についての知識に信頼感がもてず、そのため根拠のない想像で書いたように思われてしまい、インパクトを損なう結果をもたらし、うさんくさい感じが最後まで拭えない。とはいえ、本書が上梓された年月を顧みれば、無理もなかったことも解る。

 狼が犬の先祖であることは学術的に正しいことであり、野生の狼がどう家畜化されたのか、地球上のどこで初めてのケースが生まれたのかについての感心は動物好きな人なら誰にでもあるだろう。

 私個人はかつてカナダのナイヤガラ瀑布を訪れたとき、狼の毛皮を入手したことがあり、そのことも本書を入手させたそもそもの動機となった。


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