なぜ人は砂漠で溺死するのか?/髙木徹也著

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nazehitoha

「なぜ人は砂漠で溺死するのか?」  髙木徹也(法医学者)著
サブタイトル・死体の行動分析学
帯広告:死亡者の19%は異状死である
2010年8月31日 メディアファクトリー新書初版 ¥740+税

 砂漠でも雨が降ることがあるが、その雨が低きに流れて一本の道のような形のものを地上に描き、その後、人々はそこを道並みに感じて歩く習慣ができあがる。一年後か数年後か、再び雨が豪雨となって降ると、あらかじめ低くならされ固くなった道を河のように流れ下る。しかも、半端な速度ではない。土地の住人は砂漠生まれだから、誰も泳ぎを知らず、河と化した水中で溺死を余儀なくさせられる。

 本書のタイトルの部分は以上の話に尽き、全体のほんの一部に過ぎない。だから、この本も詐欺的といえば詐欺的である。

 ただ、この作品の内容の大半は日本国内の溺死、「老人の風呂場での溺死」に充てられ、ほかに法医学者として解剖という医療手段を用い死因を特定してきた日本に多い自殺者などの具体例にも触れ、したがっては「法医学者による解剖体験」といった形となっていて、タイトルを上記のようにしなくても充分に面白く、魅力的な内容となっている。

 以下に面白かった箇所をピックアップしてみる。

*砂漠での溺死の例としては2009年11月のサウジアラビアにおける降雨で、106人が死亡、50人以上が行方不明となった。

*わが国では年間1万人以上が風呂で溺死している。食後であれば、自律神経が血圧を下げ、その上、飲酒後であれば、睡眠に誘われ、日本の風呂で眠れば顔まで水中に浸かってしまい溺死は免れない。独り暮しの老人でなくとも、バスルームは独りでいる時間が長いためリスキーゾーン。(床をタイルにするなども滑って転倒死するケースがあるので要注意)。

*ボクシング、K1、ムエタイ、マーシャルアーツなどの打撃系の格闘技には脳震盪がつきものだが、パンチや蹴りが顎の先端に入ると、頭部が振られる。脳は柔らかな臓器で、豆腐パックのような状態。軽い脳震盪なら、しばらくやすませておけば治るが、急性の硬膜下血腫も起こしている場合、判断を誤ったら死は必定。

*作者が遭遇した珍しい自殺(1)看護婦が自ら工夫して感電死。(2)車のフロントガラスを割って長い鉄パイプを胸にあてて、思いきりアクセルを踏み、硬い物体に衝突(3)ドライアイスを浸かってCO2を起こし、二酸化炭素を吸って自殺。

*2008年の1年間に東京23区で死亡した人は6万8011人、うち死因不明の異常死者は1万2989人。病死が69.1%、交通事故および災害が8.6%、自殺15.3%。自殺者のうち男1,318人、女663人だが、首を吊ったケースが1,084人、飛び降りが386人、化学物質利用が174人、交通機関利用は101人、溺死が69人、催眠死が64人、鋭利な刃物によるもの64人だった。

*家の中のゴミを処理できない人が部屋で死ぬと、遺体の腐敗が早い。なぜなら、部屋の中の温度が通常より高いから。

*60を過ぎた男性で下半身を丸出しにしたまま死んでいる姿に時折り遭遇する。これはほとんどAVを見ながらの自慰行為の結果、神経が高ぶって死に至った例。どちらかといえば、射精後が多い。老人の悲しい姿。


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