日本はなぜ敗れるのか/山元七平著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「日本はなぜ敗れるのか」
山本七平著  角川ONEテーマ21

 太平洋戦争時の日本人の言動をベースに、日本人がもつ基本的な欠点を鋭くえぐり、将来への警鐘を鳴らす著作。

「精神力だ、根性だ、ガッツだと、そういうことばかりわめくのは自慰行為のようなものだ」

「虚報が先入観を生み、人間は思い込みをし、そうであるに違いないという断定を生む」

「危機を叫びすぎると、狼少年と同じ、いずれは子守唄のように聞こえてしまう」

「教育と教養とは別物、人望は教育のレベルで決まらない」

「日本人は喉元過ぎれば熱さを忘れる民族。と同時に、長い期間にわたって忍耐することが苦手」
(だから、日清、日露、第一次大戦の経験から短絡、太平洋戦争も短期間に終わると勝手推量した。ドイツには三十年戦争という歴史があり、長期にわたる戦乱の史実があるのに、それを学んでいない)。

「合理性を尊ぶ精神が欠落している。その弊害はいまなお地方行政、官吏に色濃くある」
(合理的であることを好みながら、非合理的なものに対しても妙に寛容。合理的であろうとするより、心情でものを考え、対応するのが日本人独特のキャラクターという気がする。ただ、合理的でありすぎることに弊害はないのだろうかという疑問はある)。

「セックスに関して厚顔無恥。いまなお海外への売春ツアーがプログラムされる」
(というが、同じことは革命前のフランス貴族にも言える)。

 などなど、感銘を受けた言葉はあまた。
 ことに、

「現象があって、はじめてそれに対応する。事前に予測して対応する姿勢に乏しい」

 などは、この国の現行法整備に対して痛烈な批判となっている。現状にマッチしない法律(明治期の法律までがが実態にそぐわぬまま放置されている)がそのままほかされているだけではない。自然災害の国である自覚があるのかないのか、災害が起こってから周章狼狽する。あるのは「対症療法」だけ。

 むかしからこの国では、政官民のうち合理性を追求するのは民であって、政も官も無駄を平気でやる。人の金、つまりは税金を平気で、しかも使途不明金を含め、場合によっては業者と癒着しながら惜しまずに使う。

 道路公団や社会保険庁のリゾート投資などもそのうちの一つだが、それらにメスが入らぬまま放置されている現状。「お役人天国」が続いているのも同じ、日本人に英知があるのか否かが問われている。多くの非合理的なものに囲まれているのは太平洋戦争時も現在も同じ。「長いものには巻かれろ」などという俚諺が生まれたこと自体、そししていまなおそれがまかり通っている事実が、この国の一部を象徴している。

 本書は多くのヒントを包含する。一読にも二読にも値する。

 作者はむかしイザヤ・ペンダサンとのペンネームで「ユダヤ人と日本人」を書いた人。


前後の記事

«  (前の記事)

(次の記事)  »

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ