ポアンカレ予想に人生を翻弄された学者たち

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 1904年に、アンリ・ポアンカレ(Jules-Henri Poincaré)という、数学者であり、宇宙物理学者である「知の巨人」と言われる人物が、宇宙の形に関する予測を残して逝去。

 それを「ポアンカレ予想」というが、宇宙のどこまでも届く長いロープをロケットにつけて宇宙に向かって飛ばしたとき、それが止まった時点で、一方のロープを地球に向かって引いた場合、もし、ロープが何物にも引っかかることなく引ければ、宇宙は円く、もし引けなければ、宇宙には円形でない形のもの、たとえばドーナツ形のものが存在するだろうという予想である。

 以来、百年にわたり、幾多の数学者がこの謎の解を求めて四苦八苦、なかには生涯をこの問題に充て、苦しんだあげく、学者としての立場を失い、あるいは一生を棒に振った学者もいた。

 そういった途次に、「トポロジー」という新しいアプローチ法を考案した学者が現れ、宇宙の形としてあり得る形を想定するという新説を示した。どのような形のものも、穴の数で決まり、たとえば、ドーナッツとカップは同じ形として扱うという、それまでにない柔軟な幾何学的思考に基づくもので、微分、積分では、解らないというのが、この問題を考える上での大前提であることを示唆した。

 およそ百年が過ぎたある日、ロシア人の天才数学者がアメリカに留学していたが、「ホアンカレ予想」を知るや否や、唐突に故郷に帰り、数年後に「ホアンカレの予想」の解を示した論文をインターネットを使って世に送り出した。

 まず、宇宙に存在し得る形はトポロジー的に八つの形しか考えられないことを提示したうえで、従来、役に立たないとされた微分積分を駆使、難しい「解の方程式」にたどりついたという。専門家にとってすら、彼の解を理解することに難渋する内容だったらしい。

 私は数学者ではないし、説明されたところで、理解できるはずもないが、私が関心を強く惹かれたのは、解を与えた本人がロシアの自宅から、以後、一歩も外に出ることもなく、孤独のうちに日々を送っているという事実だった。大きな壁を打ち破った学者に、しばしば起こる心理的現象だというが、これは、疲労困憊した後に襲う一種の虚脱感なのだろうか。

 「解」を示すことに成功した人物がアメリカで師事した学者がわざわざロシアまで足を運んで会いに赴いたにも拘わらず、その人物と会うことすらできなかったという。

 学問の世界にも、こうしたことが起こることに、私は不可解ながら、薄ら寒いものを感じつつ、以前に本ブログに紹介した「フェルマーの定理」を想起した。

 以上は、最近TVで紹介された「ホアンカレ予想に人生を翻弄された学者たち」というタイトルの番組である。


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2 Responses to “ポアンカレ予想に人生を翻弄された学者たち”

  1. 関西より より:

    日露戦争後の秋山真之さんもそんな感じだったんですかね。

  2. hustler より:

    一年発起して、はまりこむのもいいですけど、結果として生き様そのものに深く影響するというのは研究者ならではの心理なのではないでしょうか。辛いものがありますね。

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