秀逸な「いろはかるた」

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江戸 いろはかるた

  日本語には「い」から「ん」まで、いわゆる五十音があるが、それらを一度ずつ使って、意味のあるセンテンスを創造した昔の人はずいぶん暇だったんだなと思うことがあるが、それにしてもよく出来た秀逸な内容だと思い、ここに備忘録として記しておきたい。ただし、旧仮名遣いはやめて、現代仮名遣いに従う。

 「色は匂えど散りぬるを、我が世、誰(たれ)ぞ常ならむ。有為の奥山、今日(けふ)越えて、浅き夢みし、酔(え)ひ(い)もせず」

 さらに、「いろはかるた」には土地によって、様々な相違があると仄聞するが、私が子供の頃に親が買ってくれた歌留多はいわゆる江戸カルタだが、記憶を掘り起こしてみると、専門家が教えてくれる内容とは若干ながら、言葉に行き違いがある。

 ちなみに、この「カルタ」という言葉は、オランダ語の「カルトゥ」、ドイツ語なら「カルテ」が語源で、オランダが三世紀にわたり植民地としたインドネシアでは、現在でも名刺のことを「カルトゥ・ナマ」と言い、「ナマ」は日本語の「名前」、英語の「Name」に相当する。したがって、「カルトゥ」とは、「紙製のカード」を意味する。いうまでもなく、「歌留多」は当て字である。

 「い」犬も歩けば棒にあたる

 「ろ」論より証拠、藁人形

 「は」花より団子

 「に」憎まれっ子、世にはばかる

 「ほ」骨折り損のくたびれ儲け

 「へ」屁をひって、尻つぼみ

 「と」年寄りの冷や水

 「ち」塵も積もれば、山となる

 「り」律義者の子沢山

 「ぬ」盗人(ぬすびと)の昼寝

 「る」瑠璃もハリ(七宝に使われる水晶のことらしい)も磨けば光る(「磨けば」を「照らせば」という地域もある)

 「を」老いては子に従え

 「わ」割れ鍋に閉じ蓋

 「か」かったいのかさ恨み(「かったい」とはハンセン病のことで、江戸時代の偏見が窺える。禁止用語になっている関係で、「かわいい子には旅をさせよ」に変えているケースが多い)

 「よ」葦(よし)の隋から天井を覗く

 「た」旅は道連れ、世は情け

 「れ」良薬は口に苦し

 「そ」総領の甚六

 「つ」月夜に釜を抜く

 「ね」念には念を入れよ(「入れよ」は不要らしい)

 「な」泣きっ面に蜂(「蜂が刺す」が正解らしい)

 「ら」楽あれば苦あり

 「む」無理が通れば、道理引っ込む

 「う」嘘から出た誠

 「い」芋の煮えたの御存知ないか(「ないか」は「なく」が正解らしい)

 「の」喉元過ぎれば、熱さを忘る(「熱さ忘るる」が正解らしい)

 「お」鬼に金棒

 「く」臭いものには蓋をしろ(「臭いものに蓋」が正解らしい)

 「や」安物買いの銭失い

 「ま」負けるが勝ち

 「け」芸は身を助く

 「ふ」文はやりたし書く手はもたず(「文をやるにも書く手を持たぬ」)

 「こ」子は三界の首っ枷

 「え」得てに帆を上げ(「上げる」)

 「て」亭主の好きな赤烏帽子

 「あ」頭かくして尻かくさず

 「さ」三辺まわって煙草にしょ

 「き」聞いて極楽、見て地獄

 「ゆ」油断大敵、火がぼうぼう(「火がぼうぼう」は不要らしい)

 「め」目の上のたんこぶ(「たんこぶ」は「こぶ」でいいらしい)

 「み」身から出た錆

 「し」知らぬが仏

 「え」縁は異なもの、味なもの(「味なもの」は不要らしい)

 「ひ」貧乏ひまなし、しじめ売り(「しじめ売り」は不要らしい)

 「も」門前の小僧、習わぬ経を読む

 「せ」背に腹は換えられぬ

 「す」粋は身を食う

 「ん」京の夢は大坂の夢(京は今日と、大坂は逢坂との掛詞)

  我ながら、よく忘れずにいることに感心した。


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2 Responses to “秀逸な「いろはかるた」”

  1. tama より:

     ブログを拝見して、早速調べてみたら(岩波「いろはカルタ辞典」)「い」だけで18もあってびっくり(ノ゚ο゚)ノ
     昔の人の言葉遊びの情熱に脱帽ですm(..)m

  2. hustler より:

    「いろは」の「い」だけでも18もあるとは、すごいですね。それにしても、コメントにはありませんでしたけど、「色は匂えど、塵ぬるを」はすごいと思いませんか?一箇所も同じ言葉を使わずに、五十音だけで、すばらしい内容の一つの文章を完成させているんですから。

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