文化遺産の返還要求

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書評:ためいき色のブックレビュー-英国

  「文化遺産の返還要求」

 世界に冠たる博物館としては上記写真にある大英博物館、アメリカのボストン博物館、フランスのルーブル博物館、ドイツのベルリン博物館、台湾の故宮博物館などがあるが、いずれも日本の博物館など足元にも及ばない内容の陳列物で溢れている。

 展示物に恵まれていればいるほど、その博物館は過去に植民地あるいは後進国から文化的遺産を発掘、出土品を自国に持ち帰って展示した可能性が高く、厳しい言葉を使えば、いずれも「盗品」という点である。

 台北の故宮博物館に収められている展示物はすべて第二次大戦直前の大陸におけるどさくさにまぎれ、毛沢東の率いる軍の勢いに敗戦を悟った蒋介石が船舶を使って大量に盗んできたもの、一週間毎日見学しても全部を見ることはできないほどの量を誇っている。

 ルーブルに展示されているロゼッタストーンはナポレオンが学者を同道してエジプトに遠征に出たときにピックアップしたものだし、エジプト博物館にあるロゼッタはコピーである。

 ボストンでは驚くほど多くの鎧、兜、日本刀、大判、小判、印籠などがJapan Sectionに置かれているが、これらはおそらく明治初期にアメリカ人の感覚では二束三文で買い取ったものであろうから、日本政府が返還を要求する立場にはない。とはいえ、ボストンに置かれている中南米の文化財が納得づくで買われたものか否かには疑問が多い。

 「盗んできたもの」、「強制的に持ち帰ったもの」など経緯はいろいろあるにせよ、と同時に、それが間違いのない事実であるにせよ、先進国が持ち帰ったことで人類の重要な文化遺産が無傷で今日まで保管されたことも事実であり、各有名博物館のスタッフはその事実を例外なく強調している。

 インドネシアのジャワ島では「ジャワ原人」が出土した場所として「サンギラン」という地が有名だが、東京大学が化石類の発掘にしばしば協力している。ところが、現地に姿を現した東大教授のもとに現地人が頭蓋骨を含む化石を手に「こんなものを見つけたよ」と言ってはくるが、見つけた場所をはっきり記憶していず、ために発掘場所の地層から年代を測定することができないケースが多々あり困っているといった事実も最近ですらあったから、有名博物館のスタッフ連中の言い分にもそれなりの正当性はある。

 最近になって急に旧植民地国が互いに連携して「文化遺産の返還」を要求しはじめた裏には、かれらの経済的な台頭が無視できない。エジプトをはじめ、トルコ、ギリシャ、イタリア、中近東諸国、インドを含むアジア諸国、中南米諸国のなかにはここ数年のあいだに経済成長を遂げ、自国の文化遺産というものに覚醒し、保管し陳列するうえで科学的な手法を施す技術にも問題のない国が増えてきた。さらには、これら文化遺産が観光資源であることにも自覚的になっているだろう。

 いずれ、遠くない将来、Securityに問題のないことが確実ならばという条件つきではあるが、先進国が返還要求に応じることもあり得るのではないか。


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