日本文化が欧州で開花とは!

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 「日本文化が欧州で開花とは!」

 TVから得た知識だが、日本文化の欠片みたいなものがいま欧州でもてはやされていることを知り、「えぇ!?」という気持ちに陥った。

 漫画は、翻訳されているため、日本語でじかに読むのに比べれば深味というか、インパクトというか、そういう感じが希薄でありながら、それでも欧州全体に人気があるらしい。欧州の書店で立ち読みする若者が増えているという事実は信じられなかった。なぜなら、ヨーロッパ人は書店で立ち読みする習慣をもたないと聞いていたからだ。

 フランス人が柔道が好きで、柔道を学ぶ若者、つまり底辺が日本よりも多く、広いことは知っていたが、忍者を現代風にアレンジしたうえ、家元制度みたいなものまで考案してしまった人がいて、その人が所有する道場にはその人物が考え出した忍法を学びに通う若者がいるという話も驚きの一つ。

 7,8年前のことだったと記憶しているが、日本人の育てた鯉が中南米に紹介、輸出され、現地で交配と養殖まで始まったとの報道に接したときも驚いたが、今ではフランス、モナコ、ドイツ、オランダ、ベルギーにも錦鯉の愛好者が増えていることにはただただびっくり。むろん、そこにはブリーダーも存在するし、錦鯉を見るための池や水槽のデザインまでするプロがいるという。

 ドイツ人のなかに黒澤明監督の武田信玄を扱った映画、「影武者」に夢中になり、みずから鎧、兜、日本刀をつくり、一年に一度、愛好者が集団となって街を練り歩くという話はかなり以前に聞いたことがあるが、そのドイツにも「鯉ミュージアム」が在って、「鳥居」までがつくられているという紹介にも驚愕。

 スペイン人のなかには「パラパラ」に夢中になっている若者、モーニング娘の振り付けをパクって踊る若者がいて、モーニング娘の写真集まで入手しているという。

 同じスペインでは、日本式の綿を入れた蒲団が流行していて、底を多少高くしたうえで蒲団を敷くと、ぐっすり眠れるらしく喜ばれているという。

 江戸時代、大英帝国は日本や中国の茶は口に合わないため、セイロン島(現・スリランカ)で紅茶をつくらせ、欧州人に紅茶を飲む習慣を持ち込んだという歴史の一ページはそれほど古い話ではない。そうした歴史に、ヨーロッパ人、ことにイギリス人に日本茶が判る舌や味蕾などあるわけがないとバカにしたものだった。

 ところが、あるドイツ人が日本茶(いわゆるグリーンティー)に砂糖を混ぜて呑んだり、抹茶をアイスクリームやキャンディにして食べているという。なかには、茶器や急須のコレクションまでする好事家がいて、喫茶する人はいまやイギリス、フランスにも拡がっているという話には信じられない思いが胸にわだかまった。

 むかし、モナコの大公のもとに嫁いだアメリカの女優、グレース・ケリーが日本の京都に来たとき、桂離宮を訪れ、日本人の自然との接し方に心を動かされたことがあることは知っていたが、彼女が日本を訪問して一年後に自動車事故で亡くなったあと、大公がモナコに石庭を造ったという話は初耳だった。

 和風への憧憬はイタリアにもポルトガルにもあり、その輪が人々のあいだに拡大している事実には、つい我が身を振り返ってしまう。江戸末期や明治初期に日本を訪れた欧米人が残した滞在記には、和風を取り入れるというよりも、単純に驚嘆したり、あきれたり、困惑したり、感心したり、という内容のものが多かったが、現代の欧州人のなかには日本文化の個性を、長期にわたる独自世界で育まれた自然観や思考のあり方、他人との接触の仕方などを納得づくで取り入れる人が存在することを知り、しばらくは考えこんでしまった。

 戦後、日本人はアメリカのホームドラマに憧れ、生活の在り様のかなりの部分がアメリカナイズされることに抵抗感すらもたず、多くの伝統や文化を忘却の彼方へと置き去りにしてきた。そのことと、TVが紹介したヨーロッパの人々の日本文化への傾倒とのあいだに小さくない乖離を感じずにはいられなかった。

 フランス人は日本発祥のコスプレにも、アニメにも、コミックにも、漫画喫茶にも、ユニクロにも、ラーメン店にも、回転寿司にも関心が高く、そうした店は今や満員盛況だという。もともと、江戸時代の浮世絵を評価し、影響を受けたのもフランスの画家が多いし、日本独特の「侘び」「寂び」を理解できるとしたら、それは必ずやフランス人だろうといわれてもいる。


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