尖閣諸島問題

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書評:ためいき色のブックレビュー-尖閣

  「尖閣諸島問題」

 尖閣諸島は地理的に日本の沖縄県石垣市の一部ということになっており、歴史上では古来琉球王国が朝貢船を中国に送るときの目印でもあり、方向確認のための標識でもあった。また、一方、中国側が冊封船を琉球に送るときも同じ役目を担ったことは事実である。

 ただ、日本は日清戦争とは関係なく、19世紀末に独自に島々(魚釣島を中心に、久場島、大正島、南北小島)を点検し、どこの国からも手が及んでいないことを確かめた上で、日本の領土となし、国土地理院もこれに従い、日本地図に挿入した。以降、一時的には漁師がカツオその他の漁の時期に島に寄ったが、漁船を係留しておくための桟橋も日本人の手で作ったという経緯があり、それは今でも残っている。

 第二次大戦での敗戦後、アメリカが旧琉球諸島のうち与論島以北以外を施政下に置くこととし、そのなかに尖閣諸島も組み込まれた。当然ながら、アメリカが沖縄を返還したとき、尖閣諸島も返還された諸島のなかに含まれていたということであり、アメリカも尖閣諸島が日本領土であることを認めていたことを示している。(その後、アメリカの政治家もそのことを肯定、確認している)。

 だいたい、以前の中国や台湾の学校で教える地理では、尖閣諸島は明らかに日本の領土になっている。

 戦後だいぶ経ってから、尖閣諸島周辺海域に石油、ガスが埋蔵されている可能性が示唆されたとたん、中国、台湾が尖閣諸島の領有を主張、日本と対立した。

(中国はヴェトナム、フィリピン、マレーシアとの中間にある南シナ海の西沙、南沙海域にも同じような干渉、介入を行なって物議をかもした過去を持っており、問題はいまも継続している。つまり、中国は地下資源のこととなると、人格が変わるというより、無関心だったものにまで歴史的な屁理屈をつけて、なんとかしようとする。その鼻息があまりに臭く、辟易する。

 一方の日本は尖閣諸島のロケーションがロケーションだけに、ここに開発のための櫓(やぐら)を建てたのでは、日本本土への地理的な距離があまりに遠隔で、経済的にペイするか否かの時点で、開発を逡巡しているし、今後ともやらないだろう。

 中国はこの数年、世界の途上国で地下資源のある国に出かけては武器を供与したり、資金提供したり、インフラの整備をしたりして、地下資源の確保に全力をあげているが、そのことは、また、利害にかかわることへの動きが早い商人根性を感じさせている。

 中国が構築した天然ガス田開発のための櫓(やぐら)は中国の領海(排他的経済水域)に在りはするが、ガス田そのもののほとんどは日本領海内(排他的経済水域)の海底に在り、地勢がそうさせている以上、黙って見ている法はなく、だからこそ、共同開発を提案したという経緯がある。

 ただ、尖閣諸島において石油やガスの埋蔵がほのめかされるまえまで、中国政府は排他的経済水域はそれまで日本式の国土と国土との中間に線引きするという法に従ってきたくせに、地下資源の埋蔵が云々されたとたん、唐突に、「中国の排他的経済水域は大陸棚を基点に、それが伸びている沖縄トラフまでである」という主張に切り替え、これを繰り返している。

 中国の半ば威嚇ともいえる、今回の姿勢は新しい日本の政権を試しているのと同時に、日米の連携(軍事的なものも含め)にも探りを入れているようにも思われる。大きく経済発展した効果と巨大化した軍事力を背景にしつつ、その効果を自ら吟味していると言い換えてもいい。せっかく若干ながら良化の兆しを見せはじめた日本経済も、中国という大市場あってのものであることも、中国中枢はだれよりもよく知っている。

 (とはいえ、最近では中国に工場を設立した外国資本の多くは中国人労働者のストライキ攻勢に音をあげ、バングラデッシュをはじめとする外国へ工場を移す企業も増えているのも事実)。

 中国政府のやることは、いつもながら、醜悪、狡猾、辛辣、そして偏狭で、国際的なルールに沿っていない。こういうことが可能なのは、ひとえに、一党独裁体制であることに加え、メディアによるあらゆる批判を許容しない、許容しないでいられるという体制にある。まるで戦前の軍政下にあった頃の日本。中国の大人気(おとなげ)ない姿勢に困惑しているのは東南アジアに少なくなく、日本はそういう国と連携すべきであろう。

 今回の事件は、日中間の問題が解決したとしても、中国との関係においては、経済を含め、今後とも要注意であることを暗示しているし、欧州でも、同じ捉え方をする国が少なくない。


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