「恐慌前夜」のその後1

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 本年の9月19日に「恐慌前夜」を書評したが、その後の日米を中心とする経済状況について注意を払っていたが、日本の金融業界が海外に打って出たこと、ことに米国の金融業界の支援に出たことは意外だった。

 例えば:

1)三菱東京UFJは3兆円以上のサブプライローンの買取があり、2年以内に消える運命と断言されていたが、むしろ、アメリカのモルガン・スタンレー社への資金投入に出、救済に積極的な姿勢を示している。

2)野村證券はどこからも棄てられたリーマンブラザースの東南アジアと欧州の拠点を買収に出た。

3)ゴールドマンサックスは必ずしも磐石の経営体とは言えず、アメリカの資産家のバックアップを求め、話はまとまりつつある。

4)AIGはアリコとAIUの親会社で、これを潰すことはアメリカの威信にかかわることらしく、米政府はとりあえず資金的な支援をはじめた。

5)Citi Groupも市中銀行を買収し、作者の「危機的状況にある」との判断はミスジャッジメントかも知れないが、確かなことはもう少し時間が経過しないと見えてこない。ただ、日本にあるシティバンクは「ペイオフ」ルールに拘束されているから、預貯金の1千万円までは保証されている。

 欧州のベルギー、ルクセンブルグ、オランダが協力して政府融資を行ったが、それだけで済むかどうかは疑問。

 米政府のここまでの梃子入れは不良資産の買取に終始、資金投入による抜本的な支援ではなく、この手法がどれだけ米経済に効果的かは予断を許さない。米国民のあいだには、自由市場が死滅しつつあるとの批判が出ているし、ブッシュが法案を通すために、民主、共和、両党議員を招いて協力依頼をしたが、オバマからは快諾は得られず、法案が通るか否かは微妙な情勢。9月29日、下院で法案は否決され、ブッシュは対策に苦慮、たぶんあらためて法案に若干の変更を加えるか、全く同じかは不分明だが、法案を通すことにさらなる努力を傾注するだろう。

 アメリカがドルの凋落を食い止めることができるかどうか、世界の金融業界に与えた責任を果たせるか否か、その必死な様子を第三者の立場から観察しているのは面白いが、恐慌はアメリカを発して世界に波及し、日本にも及んでいる。

 アメリカがドル紙幣を大量に印刷することは明らかだが、それはドルの威信を一層低め、ドル安の流れをつくり、これまでドルを貯めてきた各国に甚大な被害をもたすだろう。日本は円高の傾向を強め、輸出産業に大きな影響を与えることも予測される。ちなみに、ドル保有高が一番は中国、次いで日本である。

 作者が予想したことで、ここまで当たっている部分はレアメタル(パラジウム、プラチナ、ゴールドなど)の価格が若干上昇傾向を示し、空売りの禁止が決まったこと。米国内でのATMによる送金が10万円以内という原則が決まったこと。また、ゴールドインゴットは空売りの対象にはなっていないようで、本書を読んだとき、1グラム¥3,000だったのが現在では¥3,220に上昇しているが、これも換金という手段を採らざるを得ない国は売却に出るだろう。大量に売却されることを待っている買い手もあり、ゴールドが値下がりする兆しは見えてこない。

 日本銀行が株式市場の低落に鑑み、3兆円を融資したが、たった3兆円で、事態が収まるとは思えない。日本の金融業界のダメージが少なかったことは幸運ではあるが、世界の株価が下がれば、日本市場も同じような傾向を示すであろう。同時に、円高の加減によっては、倒産を免れない企業も出るだろうし、雇用をさらに悪化させることにもなるだろう。

 アメリカ経済が今後どうなるかは、今しばらく時間をかけて観ている必要がある。


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