日本の産業構造の異質性

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 先進諸国に特徴的な産業構造として、一つは、かつて流通の革命児といわれたスーパーマーケットが出現し、裾野を拡げるに従い、それまで雑貨販売の雄として君臨していた大手百貨店が凋落したこと、もう一つは人々が海外旅行に慣れるに従い、大手旅行業者が縮小し、デスティネーション(目的地)を絞った中小業者が増えたことがある。

1)百貨店業界

 アメリカでは巨大ともいえるパーキングスペースをもつ「スーパー」の出現も、拡大も早かったため、有名百貨店の凋落もあっという間に起こり、そうした現象を目の当たりにした私は、日本もいずれ同じ道をたどることを予測した。

 ところが、スーパーが出現したことにより、日本の有名百貨店も売り上げが減少し、統廃合も行なわれはしたが、幾つかのデパートは今日までなんとか生き残っている。

 この不思議は、たとえば、三越の包装紙を高く、というより過剰に評価する人々が多くいたこと、2の価値のものを3で買うことに快感を抱く富裕層がいたことの二点に原因があったと思われる。とはいえ、現今の買い物を控える傾向のなかで、さすがに、業界の雄、三越も伊勢丹も苦しみはじめたが、時代の趨勢に押し流されてしまうのか否か、業界が曲がり角に直面していることは明らかで、目の離せない局面になっている。

2)旅行業界

 日本国内では、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、東急観光(現在名はトップツアー)の四社に牛耳られてきた旅行業界にも新しい風が吹き、元バックパッカーの社長が率いるHISがトップのJTBに迫る勢いを示し、同時に、デスティネーションを絞り、交通機関を含め特化することで特徴を出す中小業者が出現してきはしたが、大手業者が排除されてはいない。

 前々から、業界内では、遠くない将来、個人旅行が増え、同時に、缶詰旅行であるパッケージツアーなどを利用する旅行客は激減するだろうと予測していた。確かに、若い層ではバックパッカーと称される単独の貧乏旅行をする人が増えはしたが、業界を変容させるほどの数には至っていないし、パッケージツアーは依然として販売路線のトップの座を失っていない。

 イギリスにはかつて「トーマス・クック&サン」が、アメリカには「アメリカン・エクスプレス」が、旅行業界を仕切っていた時代があったが、扱いの大半は豪華客船による旅行客であり、両社ともに本業はファイナンスであった。

 日本のように、旅行分野だけを手がける企業が、一社だけで何千人、会社によっては一万人以上が働くという例は海外には存在しない。日程ががんじがらめのパッケージツアーも存在しないし、存在したとしても長期バカンス(最低2週間前後)のための往復エアティケットと現地ホテルの予約だけというスケルトンツアーである。日本でも中身をフリーにしたパックツアーを買う旅行者が増えはしたが、現地でオプショナルツアーを買うことを前提としている。

 大手の旅行業者が君臨できる風土が日本に依然として存在するのは、日本人一般が外国語に弱いことのほかに、島国育ちゆえの対外コンプレックス、つまり他民族との接触に対する無意識の警戒心、いわば小心さによるものが根にあるからではないだろうか。大手旅行業者の客を奪って伸びたHISにしても、その主力商品はパッケージツアーである。

 現在、パソコンが普及し、インターネットを使いさえすれば、海外のホテルもレンタカーも音楽会もショーも予約できるし、航空運賃も予め比較、検討することもできる。こういう時代を迎えてなお、日本人は旅行業者への依存度が海外の旅行客に比べ異常に高いのが現実。


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