男の小便と女の立ち小便

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 過日、TVで洋式トイレのど真ん中に光センサーが点灯され、そこを狙って小便をすれば、男の小便が飛び散ることを防ぐことができる」といった趣旨の宣伝があった。 世の女性から発せられる苦情への対策を考案したつりもだろう。

 断言するが、上記した手法はなんの役にも立たない。

 家庭にあるトイレが現今ではすべて洋式で、すわって大小便をする目的でつくられているから、男が小便をするとき、ペニスと落下点とに距離的な隔たりのあることは自明のことだが、男の小便が飛び散ることの理由が解っていないと、狙いが正しいか否かが目的を達することと無関係であることに気づかない。(説明者は男だったくせに)。

 男も女も、性的に刺激を受けたり、興奮したり、もよおすことがある。本を読んでいても、映画を見ていても、TVを見ていても、そういうことは現実に起こるし、体液が陰部を濡らすこともある。

 女の尿道が短いのに比べ、男はペニスの存在が尿道を長くしている。興奮したあとでも、性的行為をしたあとでも、精液は尿道を通過して外部に出る仕組みだが、男の場合、その精液が尿道を伝わってすべて排出されてしまうわけではない。尿道が長いために、精液が尿道の途中に残留することがしばしば起こる。残留している時点から早めに小便をすれば、残留体液もスムーズに小便と一緒に排出されるが、残留時間が長くなればなるほど、体液が小便を排出するとき「川にある堰」のような効果をもち、体液がやや乾燥気味だと、小便はこれを破砕して外に出ようとする。 当然ながら、その堰に圧力がかかり、排出すると、あるときは四方八方に、あるときは狙い場をはずれて、とんでもない一方に、あるいは二方に飛び散るという結果をもたらす。また、性的な興奮や行為に関係なく、飛び散るケースもなくはない。それは、男性性器を包む皮、(包皮)が、包茎という完全に密着していないケースでも、性器の先端まで包んでいる人もいて、包皮が小便を撒き散らすケースも僅かながらあり得る。

 男が、父親でも兄弟でも存在する家庭では、母親をはじめ姉妹たちが、「おしっこするときもすわってしてください」とお願いするのは、だから、正しい策であり、手法である。それ以外に、男が小便でトイレを汚さない方法はない。 

 性的な行為におよんだ直後に、あるいは、もよおした直後に、トイレに行き小便をしておけば、飛び散ることはない。しかし、そういうことに一々配慮して、トイレの清潔を保つ努力をする男は皆無とはいわないが、ほとんどいない。

 せっかく小便の話をしたので、ついでに書く。

 むかし、アメリカ人の団体をバスに乗せ、添乗したときである。東京から神奈川県を越えて箱根に向かっているとき、畑の一隅で、後姿の中年のおばさんが着物の裾を腰まではしょり上げ、立ったまま両脚をピンと三角状に開いて広げていた。団体のリーダーだった白人の男が「あれはなんだ?小便するんじゃないか?」といった直後、広げていた両脚のまんなかから大量の小水が真下に迸(ほとばし)るように落下していくのを目撃した。男は「おい、おい、日本人の女は畑で立ち小便をするぜ」と大声で団員に知らせ、若かった私は顔を真っ赤にして屈辱感にひしがれた。 

 思えば、農家のおばさんにとって自宅は遠く、かといって近くにトイレなどない状態、尿をもよおしたときは、必ず外で用を足す習慣がついてしまっていたのであろう。

 私はその男に向かって、「じゃ、アメリカじゃどうなんだ? アメリカの農地はもっともっと広いだろ? だから、いろいろな農機具を使うんだろ?で、小便したくなったら、家まで帰って小便をするのか? それとも、農地のあちこちにトイレが用意されているのか?」と抗議したら、確たる返事はなかった。おそらく、男には農家との縁がなく、農家における排泄の実態について無知だったのだろう。

 腹のなかでは、「Your words are very insulting for Japanese, and I feel very bad!」(おまえさんの言葉は日本人に対してきわめて侮辱的で、非常に不愉快だ」といってやりたかったが、相手が客では我慢するしかなかった。「お客様は神様です」といったのは歌手だった三波春夫だが、現今アメリカでも「Customer is King」という言葉がしきりに使われるようになったと仄聞する。

 ただ、私は都会育ちだから、田舎の実態を知らず、田舎出身の友人の言によれば、「男でも女でも、畑仕事をしていれば、だれだってそのあたりにやっちまうよ」とのことだった。とはいえ、女性なら、しゃがんで小便するのが一般的ではなかろうか。私が一時仕事をしていたバリ島でも、女はサロンを引き上げ、川にしゃがんで小水をしていた。

 私の脳裡には、箱根の農家の女性の、すくっと立った姿、着物の裾を尻まではしょり上げた大胆さ、そして真っ直ぐ落下させた小水が、20年以上過ぎたいまでも鮮やかに、落下音までが聞こえてくるように、残っている。

 日本女性が立ち小便をする姿を目にしたのは、それが初めてで最後だった。

 最近知ったのは、陸上競技場には女性トイレに立小便が出来るようにしてあるところがあり、時間的に制約のある選手には都合がいいのだそうである。

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