アメリカ体験記4 「おなら」

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「アメリカ体験記」 その4

「オナラ」

 かねて、アメリカ人は人間の自然現象について嘲るとか笑うとか、そういう反応をしないという話を聞いていた。

 現に、アメリカでビジネスをするようになったとき、くしゃみをすれば、必ず、だれもが「God bless you!」(神があなたを祝福していますよ)といい、そのことも、かねて知識としてもっていた通りであった。

 1970年前後だったと思うが、私は同僚のSさんと一緒に、大きなアメリカ人の団体をケアするために同行してきたアメリカ人の娘二人を接待すべく、築地にあるレストランに伴った。

 部屋は個室、8畳ほどの和室の中央に掘りコタツ式のテーブルがあり、すき焼きを注文した。

 食事の素材が運ばれ、箸をとったとたんだった。Sさんが壮大なオナラを5,6発、連発し、「Excuse me」(失礼)と言いはしたが、二人のアメリカ娘を前に、一瞬、私は顔を伏せつつ笑いを抑えることに必死だった。こうした場合に「Excuse me」とか「Pardon me」とかが妥当な謝罪語なのかという疑問もあったが、ひそかに接待相手の二人を見ると、まったくなにもなかった表情。「見事な対応」というしかない。

 私自身はSさんの、そうした生理現象にはしばしば出遭っていたし、彼の自宅に招かれたときなど、彼の娘たちも、その都度、「パパ、リビングルームでオナラするの、よしてよ」という非難の声を聞いていたから、驚きはしなかったが、このときだけは、笑いつつも狼狽した。なにせ、Sさんのオナラに比肩できるオナラを耳にした経験は未だにないほど、音が大きく派手であり、必ず5,6回、連発するという凄さなのだ。

 このとき、Sさんがオナラを連発してくれたことで、「アメリカ人は人間の生理現象を笑わない」という実際の機会に遭遇し得たことに感謝した。

 

 これって「感動のシーン」なのだろうか。いや、やはり「感動のシーン」に違いない。

 Sさん一家とは今でもつきあいがあるが、音のない、強烈な臭気を周囲に放つオナラに比べたら、Sさんのオナラは豪快で、「オナラの張本人、ここに在り」と、逃げも隠れもしない態度に、いつも感心と敬意をもっている。


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