アメリカ体験記13 「ときめきのナイアガラ瀑布」

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ナイアガラ
(写真はカナダ側から見たナイアガラ瀑布)

「アメリカ体験記」 その13 「ときめきのナイアガラ瀑布」

 1970年だったと記憶する。

 一年前にカナダから日本にやって来た団体の一員にとびきり可愛い、やや小柄なフランス系の美人がいた。名前をキャロルという。

 3か月、I君のアパートに世話になったり、ホテルに移住したりしていたあいだ、ニューヨークオフィスの仕事を手伝ったり、周辺都市をセールスで回ったりしていたが、連休を利用して、「ナイアガラに行かないか」とI君をそそのかした。

 同じオフィスにいたもう一人の男性、K君を加え、二人が運転を代わりながら目的地に向かいドライブする車中で、私は移り変わる景色を堪能し、うたた寝をしていたが、ドライブに出るまえに、トロントに住んでいるキャロルに電話をし、ナイアガラで落ち遭う約束を交わしていた。

 トロントはオンタリオ湖をはさんだ向かい側にあり、ナイヤガラへはニューヨークからよりもはるかに近距離にある。

 ナイアガラに到着するなり、私はあらかじめ聞いていた彼女が宿泊するコテージに足を運ぶと、待っていたかのように飛び出してきて、私をハグ(軽く抱き)し、頬にキスをするだけ。「えっ、これで終わり?」と思っていると、同じコテージから風采のあがらない一人の男が出てきて、「Year, I know you. I heard about you from Carolle」(君のことはキャロルから聞いて知っているよ」といい、それにおいかぶせるように、キャロルが「We’re just married. This is our honneymoon trip.」(わたしたち結婚したばかりで、これが新婚旅行なのよ」と言うではないか。

 

 かちんときた私は「Is that right](あぁ、そう)と言っただけで、その場を去ったものの、同行の二人にはコケにされ、その夜の話題は「あいつら、いまごろ、やりまくってるだろうな」と卑猥な想像を掻き立たせるだけになってしまった。そう思えば、キャロルにハグされたとき、彼女の顔にはやりまくって疲労した色が確かにあった。ナイアガラは以後一度も行っていない。不快な気分を呼び戻すことになるだろうからだ。

 以後、クリスマスカードを出すこともやめ、向こうからも来なくなって、30年以上が経つ。


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