アメリカ体験記「エレベーター」

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 アメリカにセールスで行く都度、高層ビルに在るエイジェントオフィスを訪れるとき、私はつい階数を押し、続けて「扉を閉める」を押してしまうのだが、アメリカ人には一人として、そういうことをする人がいなかったことを思い出した。ご婦人にたしなめられたことすらあった。

 記憶に蘇ったきっかけは、つい先日、TVで「扉を閉める」を押すたびに、「電気代が4銭かかる」という話を耳にしたからだが、一億人が一回ずつ押すと仮定して計算すると、400万円になるから、一人が一年間に押す回数を想定すると、相当の金額になることに気づいた。

 尤も、高層ビルが存在するのは都市部だけであり、1億人のなかには赤子も含まれているけれども、都市部は人口密集地であり、1億の2分の1と考えても5,000万人、1回「閉める」を押すたびに200万円のコストがかかる勘定にはなるし、一人が一日に一回押すだけですまないことも明らかで、相当のエネルギーが無駄に使われていることは間違いない。

 後日、アメリカ人は訴訟を恐れるあまり、「閉める」のボタンを押さないのではないか。つまり、万が一ボタンを押した直後に人が飛び込んできて挟まれでもし、怪我をした場合、訴訟される恐れがあるからではないかという推測だが、そのことをアメリカ在住の知己に話したところ、彼はこともなげに「アメリカ人は行列つくって待つのが平気な国民だよ。要するに、ボタンを押すのが面倒なだけさ」と言われた。そう言われれば、確かに、かれらが行列をつくっていつまででも平気で待つ姿をしばしば目にしたものだ。

 あらためて、日本人はちゃかちゃかする、ちまちました民族なんだなと反省した次第。以来、私は「閉める」を押すことを極力やめている。


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