アメリカ体験記「奇跡的な出遭いを果たした二人」

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デス・ヴァレー

 数年前、ラスヴェガスの友人宅を訪れたときのことだが、友人の知己Sさんが、ラスヴェガスを訪れる観光客を自分が所有するヴァンを使って周辺を案内する仕事をしていて、私はSさんの運転するヴァンに同乗させてもらい、デス・ヴァレーに連れていってもらった。日本人同乗者が他に二人いて、私よりずっと年上のカップルだったが、夫婦にしては年齢からくる枯れた印象がなく、二人ともに嬉々としたものを胸に秘めているように感じた。

 デス・ヴァレーは文字通り「死の谷」であって、初期の東からの開拓者がこのエリアに至って悪戦苦闘、かなりの数の人間が渇きを癒すことが出来ず、挫折した歴史があり、広いエリアには塩が蓮の花のように連座していて月世界のような荒地であり、アップダウンの激しい道路、岩山などが風景の中心を占め、土地としての面白さもデタラメさも同じレベルに感ずるといった不思議なところだった。

 デス・ヴァレー観光を終え、途中のツーリストスポットに到着したとき、ちょうど昼時間となり、奥さんが握り飯をふるまってくれた。カリフォルニア米は美味だからであろうか、最近食べた握り飯のなかでは抜群においしく、私の舌を堪能させた。

 ヴェガスに戻ったとき、私の知己の家でバーベキューパーティーをやることになり、カップルのお二人も参加した。その席上で、初めて知らされた二人の関係と出遭いとが奇跡を絵に描いたようであることに驚愕とともに、羨望を隠せなかった。

 実は、カップルの男性は若いときにアメリカの航空会社に就職し、アメリカに滞在、居住、65歳で停年退職したとき、突然、中学生時代の初恋の女性からメールが入り、「もしこのメールが届いたら、ぜひ届いたことを知らせて欲しい」との希望が書かれていた。男性はたまたま数年前に奥さんを失い、子共は独立していたので、このメールにときめきを感じつつ返事をしたためた。むろん、自分は現在独身であることも付け加えた。

 折り返し、彼女からメールが送られてきた内容に、彼は呆気にとられた。「実は私も数年前に夫を亡くし、その後ずっとあなたの消息を調べ、パソコンを使って検索し、ありとあらゆる手段を弄して、あなたへのアプローチを試みてきて、ようやくあなたに達することができた」とあったからだ。

 彼は彼女に自分は現在ラスヴェガスの隣の町に住んでいるのだが、「もし可能ならばラスヴェガスに遊びに来ないか」と誘ってみると、彼女は即座に快諾し、日を決め、使用するフライトを決め、ヴェガス到着の時間を伝えてきた。

  数日後、二人はラスヴェガスの空港で感激の再会を果たし、不思議なことに、互いに会うことがなくなって以来、別々の人生を歩み、50年近い歳月が流れているにも拘わらず、再開と同時に再び恋に落ちた。互いになんの違和感もなかった。一般論だが、むかしむかしの初恋の人に会った場合、大抵ならがっかりするのが落ちなのだから、この二人には宿命的なものを感じざるを得ない。

 数日後、ヴァンを運転して観光客を案内するSさんに相談すると、「だったら、簡易結婚式をラスヴェガスで挙げてしまい、正式にはお二人が居住すると決めた国であらためて式を挙げるなり、法的な手続きを採るなりすればいいでしょう」とのアドバイスを受け容れ、早速ヴェガスで簡易結婚式を挙げたばかりで、今日は観光に出かけたのだという。

 50年におよぶ音信不通の年月があって、こうしたアプローチが可能だったこと、二人ともに偶然ながら配偶者を失っていたこと、再開したとたん再び恋に落ちた事実、どれもが私には奇跡に思えた。

 「これからどうするおつもりですか」との私の問いに、男性はヴェガスの家を売却し、彼女の住む名古屋に拠点を決め、自分はそこで英語教室を開くつもりだ」とおっしゃった。そう明言する男性の顔を彼女は頼もしげに仰ぎ見ていた。

 (上の写真はデス・ヴァレー)


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One Response to “アメリカ体験記「奇跡的な出遭いを果たした二人」”

  1. withyuko より:

     このお二人のようなのを、運命の人、っていうんでしょうね~。”事実は小説よりも、、、”ていうけど、ほんとですね。
     大抵は再会するとガッカリすることが多いんじゃないでしょうか?初恋の人って。

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