アメリカ体験記「結婚、離婚、ともに7回の男」

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(写真はニューヨーク)

 当時、世界の空を牛耳っていたのはパンナムで、破産してしまったが、パンナムビルはニューヨークにはなくてはならない象徴的なビルでもあった。太い道路がビルの下をくぐることができるほどの大きな建築物だったからだ。

 ニューヨークにいた同僚のY君がパンナムと組んで日本を含むオリエント一貫のプログラムを作る計画があるので、これに協力してくれとの依頼があり、ややあって、事前にパンナムの各DSO(District Sales Office)を回ってブリーフィング(説明会)を行う目的で参加を請われた。

 13時間の飛行の末、ニューヨークで会ったパンナムのツアー担当者は男性で日本人、T君といった。

 セールスを開始するまえに、メシを食いながら、ブリーフィングを行う順序を聞かされ、それぞれのオフィスで落ち合う時間まで決めた。ところが、当日、私とY君とが指定されたオフィスに到着し、T君を待ったが、いくら待ってもやって来ない。ブリーフィングを行う部屋にはすでにパンナムのセールスマンが集合して、いまかいまかと待っている。仕方がないので、T君なしのまま、二人でブリーフィングを始めた。一時間くらい経ち、質疑応答をしている頃になって、T君が悪びれた様子もなく、ようやく到着。

 「どうしたんだ、なにかあったのか」

 ブリーフィングが終わったあと、そう問うと、

 「いや、日本に行ってて、さっき戻ったところだ」

 と、あっさりしている。

 「女だろ? 女を追っかけて行ってたんだろ?」

 Y君の詰問に、

 「ま、そういうことだけどさ。いいじゃない、無事に終わったみたいだし」

 と、まるで責任観念というものが感じられない。

 「あんた、友達をとるのか、女をとるのか」

 私が語気を荒げると、

 「そりゃ、当然女をとるさ」

 と蛙の面に小便という印象。

 聞いてみると、たまたま日本で不倫が発覚し、週刊誌にたたかれ、パンナムに頼ってアメリカに逃げてきていた有名女性シンガーがニューヨークオフィスの世話になっていたらしく、T君が日本人だという理由で、面倒見を担当したという経緯があった。T君は、このとき、パンナムのスチュワーデスをやっていた日本女性を妻とし、二人の子があったが、その女性シンガーに夢中になってしまい、本人が言うには「お願いだから、一回だけでもいいから、やらせてくれ」と、連日にわたって土下座しつつ嘆願したおかげで、その女とできてしまったという。T君はその女が帰国したため、追っていって愛を確かめてきたらしい。

 後日聞いた話だが、T君が一度の性交渉で5回、6回と射精を伴うセックスをすることに、その女性も驚愕したらしく、「いままでつきあった男はどの男も1回終わると、寝てしまうのにね。あなたってすごいね」と言われたそうで、世の中には平均値では捉えきれない男がいるものだと、つくづく思ったものだ。

 その後も、仕事のほうは順調に進み、東南アジア一帯の仕入れもうまくいき、初年度で3,000人を扱うという大成功のプログラムに育ったが、そのあいだに、T君は元スチュワーデスの妻と離婚し、女性シンガーと再婚、パンナムを辞職し日本での生活を始め、一人の子までもうけた。ところが、T君があまりに女癖が悪いことに腹を立てた女性が離縁を迫り、「慰謝料も、養育費も要らないから出ていってくれ」と言われて離婚。

 離婚の原因となったのは結婚後に日本に来て仕事をはじめていたが、秘書が二人いて、二人ともうら若い女性、T君は二人ともと関係をもち、先に子ができた女と再再婚をした。こうして結婚、離婚をくりかえすうち、50歳を迎えてなお元気なT君はオーストラリアの女性と7度目の結婚をし、子をもうけたが、この女性には本国に子供だけでなく車までもって逃げられ、あげく、「離婚して欲しい。そうしてくれれば、政府が母子家庭に補助金を出してくれるから」と迫られて、渋々離婚を承諾。その後はアメリカに帰り、ニューヨークでまた新しい女と知己になり、現在はその女とつきあっているという。ニューヨークには彼の母親がいて、不動産業を営み、成功している。

 彼は結婚、離婚がいずれも7回、つくった子は全部で8人、初婚の相手は宮崎出身だが、この女性だけが二人の子を産み、あとの女性はそれぞれ一人ずつという勘定になるが、うち半分には養育費を払い続けた。あとの半分は「お金は要らない。目の前から消えてくれと」と言われたという。

 T君は身長は156センチというチビ、色は黒いし、イケメンというわけでもない。なのに、なぜか、女をほろっとさせるものをもっているらしく、冠に「ミス」のつく女(身長170センチ)とも結婚にまでは至らなかったが、かなり長い期間つきあいが続いていた。むろん、アメリカの女が相手でも遠慮せず、こまめに責め続ける。一度などはニューヨークから日本に飛んでいるあいだに、アメリカ人女性とできてしまい、その後の日程まで変えさせて、共にバンコクまで同伴、翌朝早めに出発した彼女からは「Thanks for a beautiful night」との置手紙があったと聞く。

 相手をとっかえひっかえするのは、どうやら家系というか血筋でもあるらしく、実はT君の母親が3回結婚、離婚をしていて、ニューヨークに転居した60歳になってから不動産業を始め、成功している。この婦人に興味をもったニューヨーク在のアメリカ人ライターが取材に訪れ、話があまりに面白いので、一冊の本にするばかりか、ベストセラーになったら映画化もするという情報が伝わってきている。T君はいま、この母親のところにころがりこんでいるという噂だ。

 この人の話をしているときりがないので、このあたりでやめにしておく。


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