アメリカ体験記「ポーカー」

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サンフランシスコ ケーブルカー

 セールスの途次、ロスアンジェルスで競馬場に連れていかれたことがある。ロスの競馬は馬ごと荷駄のようなものを引き、それなりの迫力で走るというもの。ここで賭けた金はすべてとられ、次いで、ロスからサンフランシスコに飛んだ。

 待っていたのは支店長のHさんとその右腕のTさん、サンフランシスコJAL支店のボスの家に上がりこんで、ポーカーを始めた。根っからギャンブルの好きな私はかつてTさんとパチンコ通いをしたこともある仲である。

 時間が経つうち、負けが込んで、唇を噛み締めていたとき、いきなりフルハウスが手元にきた。段々に賭け金を上げていくうち、意外に降りてしまう人もなく、場にはかなりのドル札のキャッシュが積みあがった。「全部いただきだ」とほくそ笑んで最後の一枚を捨て、プレイヤーの一人、Tさんが最後の一枚をめくったとたん、「やったー」との掛け声とともに、5枚のカードを拡げた。なんと、私と同じフルハウスだが、エースが入っている分、Tさんの手持ち札のほうが私の札より上のランク。要するに、Tさんはたかがツーペアなのに、これを諦めずに、最後まで賭け金を払い、しかも最後のたった一枚のチャンスを引いたということになる。私としては、この恐ろしいほどのラックに言葉もなかったというのが本当のところ。

 余談だが、ポーカーには「ツーペアの地獄」という言葉がむかしからある。ペアのいずれかに同じカードが入れば、即座に上記したようなフルハウスが期待されるからで、ツーペアそのものは大した手ではないのに、「ひょっとして」というスケベ根性が棄てきれず、諦めきれない気分を表した言葉。Tさんもその地獄と最後まで戦い、勝利を得たということで、これは賞賛、報奨の対象にもなり得ること、私としてはもって瞑すべしという気持ちであった。

 場にあったキャッシュの束がTさんの手に掴まれ、ポケットのなかに消えていくのを、がっくりして見ていたのが、まるで昨日のことのように想い出される。Tさんとはその後も交友が続いている。

 上の写真はサンフランシスコのケーブルカー。


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