偉大な数学者たち/岩田義一著

偉大な数学者たち

「偉大な数学者たち」
 岩田義一著(1916-2000)著
 ちくま学芸文庫 2006年12月初文庫化
 本書は1950年に上梓されたもの

 

 本書はアルキメデスの死に始まり、ガロアの死に終わる、2000年間にわたる天才数学者たちの物語であり、主に採り上げられた数学者は20人だが、名が挙がる学者名は31人以上に昇る。残念ながら、日本の関や、インドの天才の名は挙がっていない。

 独創的な理論や研究はしばしば周囲に理解されず、また時代による影響も避けることができず、対象となった数学者たちの誰もが一世紀に一人という天才でありながら、生存中には戦争や支配者の陰に隠れ、この世の栄華や幸福とはほとんど縁がなかった。

 作者は言う。「とはいえ、芸術品は形あるがゆえに修復の手を煩わせなくては保存できず、放置されれば滅びるという宿命を持ち、美しい言葉も外国語に翻訳されれば、美しさをそのまま、質的内容をありのままに外国人に伝えることには限界がある。それに比較し、数学の真理は時代が変わろうと、いかなる言葉で表されようと、その美を失うことはない」。

 (芭蕉の俳句を英語に直しても、その奥に秘められた心までは伝わらないことと同じ)。

 エジプトのアレキサンドリアには前世紀に大図書館が存在したが、ローマ帝国はキリスト教国になるや、それを焼き払い、図書館が同じ市内に数世紀後に修復なったとき、再べ焼き払ってしまった。ローマ人は道路をつくり、水道をつくったが、数学には関心を示さなかった。

 (道路づくりも、水道づくりも、ローマ人ではなかったという説もある)。

 もし、その間、アラビア民族がギリシャ文化を受け継がなかったら、ギリシャの光明が後世に伝えられなかった可能性を否定できない。代数のことを「Algebra」というが、これはアラビア語の「Al jebr」が語源であり、かられが考案したアラビア数字は、かれらがインド人から教えられたゼロの考えを世界に伝えたことによる功績を含め、賞賛に値する。ちなみに、アラビア人のオマル・ハイヤームは「3次方程式」を研究、「2項定理」を発見している。

 ギリシャ数学が滅んで1000年後、タルターリヤ、カルダーノ、フェラーリなどの数学者が輩出して、3次方程式、4次方程式を解き、16世紀のイタリアを飾lり、ギリシャ数学が西欧に伝わるよすがとなったことは幸運だったというだけでなく、忘れてならない学問上の歴史。

 ナイル川に幾何学が生まれ、エジプト人はそれを使ってピラミッドをつくったが、この国では数学は実ることなく、天文学、医学なども発達させたが、宗教色が強く、純粋な学問に結晶しなかった。ギリシャ人は多くをエジプトから学んだ。

 本書に登場する天才たちの名は:

(1)「力学」「回転楕円体」「回転放物体」のアルキメデス「Alchimedes」

(2)「三角形の定理」と「三平方の定理」のピュタゴラス「Pyihagorasu」

(3)「杖と影の長さからピラミッドの高さを測り、二等辺三角形の底辺にある2つの角は互いに等しいことを証明した」タレス

(4)「幾何学」のプラトン、哲学者のソクラテス、アリストテレス

(5)「原子論」(アトム)を説き、「真空の存在」をほのめかしたレウキッポス

(6)「ユークリッド原論13巻」のユークリッド

(7)「曲錘曲線論」のアポロニオス

(8)「整数論」のディオファントス

(9)「地動説」を唱えたコペルニクス

(10)「コペルニクスの地動説」の正しいことを認識したガリレイ「Galileo Galilei」(1564-1642)

(11)「ケプラーの三法則」で惑星の動きを確認したケプラー「Johonnes Kepla)1571-1630

(12)「解析幾何学」のデカルト「Rene Descartes」1596-1650

(13)「フェルマーの定理」や「微分法」「確率論」で名をなしたフェルマー「Pierre de Fermat」1601-1665

(14)円錐曲線論」「確率論」「極大極小の問題」のパスカル「Blaise Pascal」1623-1662

(15)望遠鏡を改良し、土星の環を発見したのみならず、遠心力を発見、「光の反射、屈折の法則」を証明したホイヘンス「Christaar Hygens」1629-1695

(16)天文学では「万有引力の法則」を発見、数学、物理学では「無限級数」「微分法」「積分法」「方程式3次曲線」「光のスペクトル」「粒子説」「光学」などで有名なニュートン「Issac Newton」1642-1727、(イギリス人)

(17)「地球のサイズを正確に測ったことで、ニュートンの理論が符号することを証明したピカール

(18)「微分、積分の記号化」を世に出し、現在でもそれが使われているライプニッツ「Cottfried Wilhelm Leibniz」1646-1716(ドイツ人)

(19)「π:円周率の証明」「等周問題」「最速降下線」の研究などで名をなしたベルヌーイ一家「Jakob Bernoulli, Johann Bernoulli, Daniel Bernoulli」17世紀ー18世紀。

(20)「力学概論」「水や風の理論」「方程式が根をもつことを示唆した」ダランベール「Jean Le Roudd Alembert」1717-1783

(21)「無限解析入門」「微分学教程」「積分学教程」のオイラー「Leonhard Euler」1707-1783

(22)「等周問題」のほか、変分法に関する着想を力学に応用、現代の解析的な力学を創意、「整数論」「関数論」を発表したラグランジュ「Joseph Louis Lagrangt」1736-1813、(イタリア人)

(23)「天体力学」「宇宙論」のラプラス「P.S.Laplas」1749-1827

(24)「築城術の専門家」、モンジェ「G.Monge」1746-1818 (フランス人)

(25)「整数論」「楕円関数論」「初等幾何学」「画法幾何学」のルジャンドル「A.M.Legendra」1752-1833(フランス人)

(26)「惑星の軌道について」という論文のなかで「火星と木星との間に未知の惑星は存在しない」ことを哲学的に証明したヘーゲル、1770-1831

(27)「黄金定理」「算術幾何平均」「正17角形の作図法」「一般楕円関数の発見」「モジュール関数の発見」「整数論」などの発表で有名なガウス「Carl Friedrieh Gauss」1777-1855

(28)「代数的解析の教程」「微積分法講義要綱」のコーシー「Augusutinn Louis Cauchy」1789-1857

(29)「5次方程式は根号では解けないことを証明」「楕円積分変形論」「素数の分布に関する定理」を発表し,「電流計の発明」をし、アンペアの語源となったアベール「Niels Henrik Abel」1802-1829 (ノルウェー人)

(30)「光の波動説」を復活させたトマス・ヤング(1773-1829)

(31)18歳時に「ガロアの定理」と呼ばれる「整数論」を発表し、若死にしたエヴァリスト・ガロア「Evarrste Galois」1811-1832

 著者は「静電気における電子、およびイオンの運動に関する研究」が評価され、1964年に仁科記念賞を受賞した物理学者で、本書はその子共たちの意を汲んで再出版されたものというが、それだけの価値はある。

 なお、アルキメデスについては、本ブログで2007年6月3日に書評している


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ