航海者 三浦按針の生涯/白石一郎著

「航海者」(上下巻) 白石一郎著
文春文庫2005年刊

本書は副題に「三浦按針の生涯」と書かれていて、その名にはかねて思いがあった。「思い」というのは、三浦按針を的確に書いた書籍にお目にかかったことがなかったからだ。

久しぶりその名を目にして、探し物に出遭った気分で入手した。

三浦按針は戦国末期に渡日し、徳川家康に厚遇を受けたイギリス人。神奈川県の三浦半島に二百五十石を得、両刀をたばさみ、裃を着して直参として働いた初の帰化外国人。格式は旗本と同クラス。

史実としては、家康、家忠両将軍の下にあってどのような働きをしたか、具体的なことはまったくわかっていないらしい。按針が残した二人の子供(ハーフ)についても、その後のことは混沌として不分明。

資料がないことで、作者に逆に奔放な想像力を駆使させ、結果、小説としては、結構を含め、それなりに成功しているけれども、私のようにドキュメンタリータッチなものを求める読者には「嘘やでたらめやつくり話が多すぎる」ように思えてしまい、「三浦按針」その人に肉薄して欲しい念願はここでも裏切られることとなった。

同じ著者の作品に「海浪伝」があるが、こちらの方が訴える力があったという記憶。


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